「必殺ジェニーフラッシュ」
岩泉女体化で及岩小説です。
ツイッタでフォロワーさんが白いワンピースの話をしておられたのに反応してしまい、そういうにょたいわちゃん話です。高1か高2の夏話です。
大会とかどうなってるのかは考えないことにしています。
ジェニーはフォレストガンプのジェニーです。文中の豆とニンジンもそうです。
ああはならないようにくれぐれも及川さんには頑張っていただきたい。
インテに及岩で申し込みました・・・本作る~!
岩泉女体化で及岩小説です。
ツイッタでフォロワーさんが白いワンピースの話をしておられたのに反応してしまい、そういうにょたいわちゃん話です。高1か高2の夏話です。
大会とかどうなってるのかは考えないことにしています。
ジェニーはフォレストガンプのジェニーです。文中の豆とニンジンもそうです。
ああはならないようにくれぐれも及川さんには頑張っていただきたい。
インテに及岩で申し込みました・・・本作る~!
必殺ジェニーフラッシュ
居間にも台所にもお母ちゃんの姿はなかった。日曜の朝一から買い物にでも出てるんだろうか。テーブルに用意があった茶碗に白米をよそいながら考える。タイムセールか。朝採れの野菜が飛ぶように売れるらしい。
おみおつけと味海苔でご飯を2杯食べ、洗面所の鏡の前に立つ。どこかへ出掛ける予定はないが、一応髪の毛くらいはちゃんとしておきたい。ちゃんとすると出掛けたくなってしまうのだがよい循環だろう。ついつい新しいものが気になって増えてゆくワックスだのジャムだののミニボトルを手に取ったりひっくり返したり、そうしているうちに玄関からただいまーの声が聞こえてきた。がさがさとビニール袋の音もするからタイムセールで当たっていたとみえるね。
「おかえり」
声を張れば、今日は暑くなりそうよ、と嬉しそうな返答だ。洗濯物が溜まっているのだ。
「そこではじめちゃんに会ったわよ」
「ふうん」
てことは今日は誘ってもだめなのかな。せっかく貴重な夏休み中のオフなのに。
「おめかしして、お出かけみたい」
「今度はどんなTシャツ着てたの」
うちの母親的に一番ヒットだったのは「霧ヶ峰」だ。「涼しそうでいいわあ」「そうでしょう、そうでしょう」と去年の夏の暮れに意気投合していた謎のシチュエイションが脳裏にまざまざと蘇る。
Tシャツじゃないわよう、と心外そうな気配。
「夏らしいかわいいワンピース着てたのよ、珍しいでしょう。白くて女の子らしいやつ。まあ似合っててねえ、かわいいわ、かわいいわ~って誉めたら逃げられちゃったんだけど、きっとデートじゃないかしら。はじめちゃんって彼がいるのかな?徹知ってる?」
半分くらいまで言ったところで洗面所からは何か複数の小物を薙ぎ倒しぶちころがす音ががらがらと響き渡りまくっていたのだが、とりあえず最後まで述べて息子の反応を伺う及川家の母だ。
半分くらいまで言ったところで洗面所からは何か複数の小物を薙ぎ倒しぶちころがす音ががらがらと響き渡りまくっていたのだが、とりあえず最後まで述べて息子の反応を伺う及川家の母だ。
洗面所のドアが開く。部屋着の息子が覚束ない足取りでまろび出てきた。
「あら変な頭」
「ちょっ、ちょっ、えっ、どっち」
「なにが」
「岩ちゃん」
でかい図体がサンダルを履こうとして、玄関先に出ている履物を数足蹴り飛ばす。
「こらちょっと、なに慌ててんの」
「い、岩ちゃんは」
「・・・朝から家族のためにお買い物してきた母親を助けて、この重たい荷物をどうにかしてあげようとか、ないのかしら」
母が暗に脅迫している事を嗅ぎ取り、もどかしそうに上り框に散乱する荷物と母の顔を数回見比べる及川徹。観念したようにサンダルを脱いで、取っ手が伸びたスーパーの袋を拾い集めた。
「もー、俺すぐ出るかんね」
「はいはい、テーブルでいいわよ置いといて。あんた力持ちねえ、助かるわ。はじめちゃんなら公園通りの方に走ってったから、駅に行くんじゃないかなって」
「ほーい」
重量感のあるビニール袋を食卓の上に並べ置き、及川は手をはたきながら廊下へと踵を返した。
「駅に行くんならクロワッサン買ってきて」
「行けて買えたらねー」
「あと、あんた頭」
玄関の、扉が閉まる音で忠告が遮られる。
及川母は、遠い目をした。幼い頃は天使のような息子だったのだ、見た目の話だが。
今でも自慢の息子に変わりはないのだが、色々と、
「残念感が・・・」
思うほどに、溜息が出そうだ。
性格が見栄を張るたちだし、見栄を張れば張っただけ艶の出る男に育ってしまった。気がつけば、コートの中ではちょっとしたアイドル並の歓声を背負っている息子だ。家に連れてきた女の子の数も、けっこう計り知れない。彼女だったり女友達だったりとその関係は色々なのだが、まあ軽いこと軽いこと、実の母でもちょっとムカつくぐらいの調子のこきかたをするのである。
「はじめちゃんにほんとに彼氏できたら、あの子どうすんのかしら」
ていうか、どうなんのかしら。
やや虚ろなまなざしで、野菜を取り出しては仕分けしながら、
「豆とニンジンなんて言うけどねえ」
息子不甲斐なさに、苦笑交じりで呟いた。
俺と岩ちゃんは何がしかの運命で結ばれているので発狂する前に見つけることができた。「白、白」とお母ちゃんから聞いた服、というか、わ、ワンピースの、色を思い浮かべながら公園沿いの向かいの歩道を走り、行き過ぎて戻り、向かいの歩道へ横断しようとしたところで発見した。
俺と岩ちゃんは何がしかの運命で結ばれているので発狂する前に見つけることができた。「白、白」とお母ちゃんから聞いた服、というか、わ、ワンピースの、色を思い浮かべながら公園沿いの向かいの歩道を走り、行き過ぎて戻り、向かいの歩道へ横断しようとしたところで発見した。
発見した俺の第一感は「あー妖精だ」である。
ミディアム丈の白が、岩ちゃんの膝小僧の上を、風に煽られたふりして撫でていた。
Tシャツが霧ヶ峰の思い出を持ち出して早々になんだけど、岩ちゃんはけっこうおしゃれさんだ。流行り物や甘ったるいジャンルは歯牙にもかけない。こざっぱりしてシュッとした感じのボーイッシュなのがお好みなのだ。一緒に服を買いにいくと、かなり楽しい。
そんな通常のお好みとは今日は、全然違った装いだった。
こういう服をを岩ちゃんが着ているということにまずびっくりで、それが、たいそう、なんていうか、悪くなかったので、二度びっくりする俺だ。一石二鳥だ。ちがうか。どうでもいい。
白いワンピースは、ノースリーブのストラップタイプだった。
ストラップは細いリボンのかたちをしていて、肩のところで蝶結びになっていた。
日に焼ける前の桜色の肌色と、ちょっと幼めの目鼻立ちと、ぴかぴかしたイキのよさそうな岩ちゃんの空気に、よく似合っていた。
知らないお嬢さんのような岩ちゃんだった。今朝も、俺は、きみを頭からむしゃむしゃと食べる夢を見て死にそうな思いをしたところだというのに。
しばらく追けてゆくうち、ふと、岩ちゃんが横を見た。慌てて隠れたくなったけれど、岩ちゃんの瞳から放たれる力強いレーザービームは俺に向かってこない。公園内で子供が騒いでいる。木の上に、放ったボールが乗っかってしまったらしかった。
しばらく追けてゆくうち、ふと、岩ちゃんが横を見た。慌てて隠れたくなったけれど、岩ちゃんの瞳から放たれる力強いレーザービームは俺に向かってこない。公園内で子供が騒いでいる。木の上に、放ったボールが乗っかってしまったらしかった。
岩ちゃんはざかざかと植え込みを乗り越えて接近していった。
太い幹を取り囲んでいる子供数名と何言か交わし、その幹に、取り付く。
そして密かに茂みの裏から俺が見守る中、お猿さんのような手際でするすると樹木に登った岩ちゃんは、小脇にボールを抱えて戻ってきた。まったく危なげがない。
ボールを受け取った子供の歓声に片手で応え、名乗りもせずに立ち去るその後姿からただようバリシブ感たるや武士である。さすが岩ちゃん、音を立てずに形ばかりの拍手を俺がここから贈るよ。
そうして若干薄汚れつつも、なんだか歩みのイキがよくなった岩ちゃんがずんずん行くのを、付かず離れずでつけてゆく俺。接触していいものかは、タイミングによりけりだ。それにつけても、剥き出しの肩がちっちゃい。そのちっちゃい所で蝶結びの細い紐が揺れるたび、見守る俺の心臓は泡を吹き、結果頭まで血液が回らず、足の運びがますます怪しいことになってくるのだがどこへ何しに行こうというんだい岩ちゃん。
そうして若干薄汚れつつも、なんだか歩みのイキがよくなった岩ちゃんがずんずん行くのを、付かず離れずでつけてゆく俺。接触していいものかは、タイミングによりけりだ。それにつけても、剥き出しの肩がちっちゃい。そのちっちゃい所で蝶結びの細い紐が揺れるたび、見守る俺の心臓は泡を吹き、結果頭まで血液が回らず、足の運びがますます怪しいことになってくるのだがどこへ何しに行こうというんだい岩ちゃん。
また岩ちゃんが、足を止めて余所見をした。俺も習う。池のほとりで泣きじゃくる子供を、お母さんが叱っているようだ。耳が痛い。
岩ちゃんはまたざかざかと植え込みを跨ぎ、迷いのない足取りでそちらへ向かってゆく。池を指差す子供や焦る親に何か声をかけて、サンダルを蹴り脱ぎスカートの裾を一まとめに膝上で握ると、柵も越えて池の中に入っていってしまった。たしかにそこは足が着く、俺も知っている。底が見えるのだ。
小さなサンダルを池の中から拾い上げて、岩ちゃんが戻ってきた。泥だらけの素足が草を踏む。まぶしい。
しきりと頭を下げる親御さんにサンダルを渡し、子供にも何か声をかけて、水撥ねで水玉模様になったワンピースを翻す。武士だ。野武士だ。
今や岩ちゃんは意気揚々とした背中で歩いている。なんてことない振りをしても続けざまに人助けをしてテンションが上がっているに違いなかった。そんなるんるんした感じで岩ちゃんは公園横を通り過ぎ、バス停の前まで来て、立ち止まった。
今や岩ちゃんは意気揚々とした背中で歩いている。なんてことない振りをしても続けざまに人助けをしてテンションが上がっているに違いなかった。そんなるんるんした感じで岩ちゃんは公園横を通り過ぎ、バス停の前まで来て、立ち止まった。
バスに乗るわけではないらしかった。
岩ちゃんはバス停の時刻表横にある広告板を見ていた。笑顔の女優さんがお中元のビールをハイどうぞのそれに興味があるわけでなくて、ぴかぴかしたその表面を鏡に自分の姿を見ているに違いなかった。
違いない、というのは、岩ちゃんの顔が青ざめて固まったからだ。
白いワンピースはかなり薄汚れ、しかもめちゃくちゃ泥が跳ねていた。と言うか、服といわず肌と言わず樹液や藻が張り付いて相当にやんちゃな感じだ。
しばしその姿を広告板越しに凝視したのち、岩ちゃんはぐるんと踵を返した。俺は慌てて横道に隠れる。
岩ちゃんは少し駆けて、やがてとぼとぼした足つきになって、公園の中に入り込むと木陰のベンチに腰を降ろしてしまった。
池では水面がきらきら照り輝いているし、空だって青いのに、岩ちゃんは履物を脱いでベンチの上で膝を抱えだす。
俺は、登場することにした。
「どしたの岩ちゃん」
声をかけると、岩ちゃんは軽く跳ね上がった。
「んな驚く事ないじゃん」
「驚くわ急に声かけんなあと近い!!」
びゃーっと怒られる。無視だ。
「ねえ、どうしたのってば」
「・・・・・・」
岩ちゃんは俺から目を逸らし、
「・・・・・・ぐふっ」
変な感じで吹き出した。
「・・・なんで笑うんだい」
「おまえ」
岩ちゃんはひとしきり肩を震わせてから、
「ちょっと」
と、立ち上がり、俺の手を取った。
「こっち、こっち来い」
「え、な、なに、なに」
手を繋ぐなんて小学生ぶりくらいのことだ。今日の岩ちゃんはいろいろほんとにおかしいぞ。成す術もなくついていく俺が立たされたのはさっきのバス停の広告板の前で、それで自分の姿を反射で見せられた俺は地面に膝をついた速攻で。
「ぐ、ぐふふ。わかった?わかったかな?」
岩ちゃんがものすごく嬉しそうに人の醜態をあげつらう。
俺は。
寝癖で後ろ頭の髪の毛がすごい具合に跳ね上がっていた。
「ああああ」
「ぐははははは!お前どしたの何なの!?あれなのサイヤ星の王子なの!?」
悪の提督のごとき哄笑で俺の心臓をえぐりつつ、岩ちゃんの手がうずくまる俺の頭に伸びてきた。言葉とは裏腹に、優しく指で髪の毛を撫で付けてくれる。
「あはは、ひよひよ」
「うええん、俺の癖っ毛知ってるでしょう」
もう、いやだあ。
俺がめそめそすると余計に岩ちゃんは上機嫌となり、俺の頭をよしよしと触り倒してくれた。
「あはは、無理だこれうふふ」
「ひどいよう、もー全然気付かなかったよー恥ずかしいよう」
ついつい、普段よりも5割増しで甘ったれた声が出てしまう。岩ちゃんは「なんかまだおかしいけど、まあマシになった」と大雑把に俺のグルーミングに見切りを付け、「ええと」と周囲を見渡す。
道行く人々の、痛いカップルを見守る生暖かい視線に気がついたらしく、「あっちいこ」と再び手を引かれた。はい、どこへでもついてくよ。
先ほどのベンチへ逆戻りした俺たちは、並んで腰掛ける。「あーあ」と岩ちゃんが通常のテンションで溜息をついた。薄汚れて飛べなくなった紋白蝶のようだ。
「かわいいカッコして、どうしたの」
褒めたはずなのに、ぎん、と思い切り睨まれる。
「嫌味か」
「どうしてよ。まあ珍しいけど、にあってるよ」
岩ちゃんはむっつりと黙り込み、足でざかざかと地面を蹴立てて俺に砂をかけた。
「ちょっと何すんの」
「ありがとよ」
「照れ隠しはもうちょっと大人しくやろう?」
ぷい、と横を向いてしまう岩ちゃん。
「似合ってるよ」
重ねて言っても、振り向いてくれないかたくなさに、胸の内がむず痒くてたまらなくなる。
すらりと伸びた足が汚れて、塗れた裾がそこにまつわりついているのが、目の裏に焼き付いてゆく。
水分含みの布の感触に耐えているような腿の曲線が、いじらしかった。光り輝いて見えるくらいにいじらしかった。
その光に身が焼かれる心地がするほどに尊いものだった。
翅をもいで閉じ込めることなんかできない。とびたってゆくのを思えば気がふれる。
「いわちゃん」
手を、握っていてもいいですか。などと聞くこともできずに黙って触れる。
「なんだよ?」
さっきは自分から繋いできたくせに、手を重ねられてびっくりして振り返る岩ちゃんの、底知れない黒々した瞳を覗き込む。見つめ返されると、ぐうと喉が鳴った。どうしてこんなにきれいな目をしているのだ。君の心を映してなのか。だから光っているのかい。
「誰かと、会うの」
ん、と岩ちゃんは、元気のなくなった顔で頷いた。こくりと重そうに頭をうな垂れさせる。
「でも、せっかく服、これ、選んでもらったのに。怒られるかなあ」
「岩ちゃんを怒るようなやつは、俺がぶち殺す」
言う唇が震えた。
「おまえ、物騒だな」
と岩ちゃんが小さな肩をぶつけてくる。悩んでてもしゃーないか、と、立ち上がろうと俺の指をほどく。飛び立とうとする。やめようよ。なあ岩ちゃん。
「おばあちゃんそろそろ着くし」
「・・・うん?」
「毎度大荷物だしなあ」
「・・・・・・おばあちゃん?」
「うん、大字のおばあちゃん、今年は二泊しにくるの」
おばあちゃん。
「・・・・・・おばーちゃん、なかなかいいセンスしてるね・・・・・・」
「なんか通販で買ってくれたみたい」
はまっているらしい、通販に。岩ちゃんのそう続けてくる声が遠くから聞こえる。
あのねえ、岩ちゃん。
岩ちゃんのおばーちゃんをぶち殺すことなんてできないけど、一緒に怒られてあげることはできるよ。
息も絶え絶えにそう告げると、岩ちゃんはまことに、なんだか妖精のようないたずらっぽい顔で笑った。
及川家の母が炊き上がった飯を混ぜているところに息子が帰ってきた。
及川家の母が炊き上がった飯を混ぜているところに息子が帰ってきた。
帰ってくるなり、
「今日俺岩ちゃんちでご飯食べてくる~!」
どたばた床を蹴り叩きながら二階の自室へ駆け上がっていく。
「小学生か」
思わず独り言が出た。
階上で何やらガタゴソ音がして、またけたたましく降りてきた息子が、
「おかーちゃんゴメン俺今日晩ゴハン岩ちゃんちで食べていい??」
「どうしたのよ、もうご飯できるのに」
「これクロワッサン」
「あらー!」
しょうがないわねー!とベーカリーの紙袋を受け取りつつ、絆された振りで許してやると、
「それじゃ行ってきまーす!」
「待ちなさいあんたホントにバカなんじゃないの?あっごめんバカは言い過ぎた、焼き茄子持ってってよ作り過ぎたから。あと頭、直してから行けば」
「頭は、頭はいいんですこれで」
息子の反論を聞き流しながらタッパに皮を剥いた茄子を詰め、そいつを差し出しがてら振り返ると、顔立ちは母似で体格は父似という巧いとこ取りのイケメンが、自分の頭頂部の髪の毛を指でいじりながら顔を赤らめていた。
「ふふふ」
「徹、気持ち悪い」
思わずガチで引く母だ。
もうもう、ひどいなあもう、と変なテンションでタッパを受け取った及川徹は、続いて同じく母から渡されたビニ袋にそいつを仕舞いつつ、
「あっ、そうだ、お母ちゃん」
「なあに、なんかわざとらしいよ」
「岩ちゃん彼氏なんかいないよ~。もーほんとモテないんだから俺の幼馴染なのにねえ。今日は駅におばあちゃん迎えに行ってただけだよお」
おばあちゃんのおこわ食べに行くんだよ~、と、及川両家の祖父母が見たら悲しみそうなくらいの上機嫌だこのバカ息子。
「まあ、もう、失礼のないようにするのよ」
「わーってるよお母ちゃんの息子だよ?」
ああバカかわいい。親の欲目で少し顔が緩む。遅くなっても許そう。
飛び立っていく及川家の評判息子は、どこからどう見ても浮かれていた。まー無理もないか、と嘆息する母だ。
(かわいかったものねえ)
白くて危うくて光に照らされると少し肌が透けて、あれがモテないだなんて、世の男子高生の見る目を疑わざるを得ない。
「それか、うちのに危機感が著しく欠けているのか」
菜箸を握ったまま、しばし考え、
「やめよう、なんか絶望的になってくる」
今、皆が幸せならば、ひとまずはそれでいいとするしか。
「徹がダメなら猛に頑張ってもらえばいいしね」
嫁取り計画である。
所詮、母のほうも、幼馴染のはじめちゃんがかわいくてしょうがない人種なのであった。
―――岩泉家父方祖母の大荷物から、かわいげな紺地の浴衣が孫への土産にとお出ましになり、この夏の気温湿度がますますもってえらいことになるのは、もう少しだけ先のことである。
―――岩泉家父方祖母の大荷物から、かわいげな紺地の浴衣が孫への土産にとお出ましになり、この夏の気温湿度がますますもってえらいことになるのは、もう少しだけ先のことである。
おしまい
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