「必殺スノーホワイトクラッシュ」
岩泉女体化の及岩←花小説です。
もしかしたらちゃんと及岩を両想いにして終われるんじゃないかな・・・という欲が出てきたけど、楽しいままに書いていきたい!
及川さんがちゃんと岩ちゃんを落とすところまで頭の中にはあるけど、長く置いておくと書く勢いがなくなりそう。
あと、もっとドキドキする青春な感じをもっともっと勉強したいですね!
愛は世界を救うよ!(今ドキドキプリキュアでそういう展開で最終回を迎えようとしてて、今日それでちょっとなけたので愛というフレーズに敏感)
岩泉女体化の及岩←花小説です。
もしかしたらちゃんと及岩を両想いにして終われるんじゃないかな・・・という欲が出てきたけど、楽しいままに書いていきたい!
及川さんがちゃんと岩ちゃんを落とすところまで頭の中にはあるけど、長く置いておくと書く勢いがなくなりそう。
あと、もっとドキドキする青春な感じをもっともっと勉強したいですね!
愛は世界を救うよ!(今ドキドキプリキュアでそういう展開で最終回を迎えようとしてて、今日それでちょっとなけたので愛というフレーズに敏感)
必殺スノーホワイトクラッシュ
部室の長椅子に手枕で寝そべっていると、また岩泉が現れた。花巻は眼を開ける。
「おじゃま。また寝てんのお前」
「あーん」
ぼやけた声で喉を震わせながら起き上がる。
「いーよ寝てろよ」
「なあ」
机の上に顎を乗せて、半分落ちた瞼のまま花巻は尋ねた。
「ボタンつけれる?」
「え」
岩泉は、眼を見開いた。
花巻は岩泉が片手にぶら下げた、学校指定のでかい裁縫箱を見ている。
「自分でやれよ」
「むり」
今朝出したピーコートを、尻の下から引きずり出す。
「取れた」
ボタンが。
「あーあ」
「ここに来たのも何かの縁だよ。つけて」
「いいけどさー」
自分でやんなってば。と裁縫箱を袋ごと手渡そうとしてくるので、
「たまどめができない」
と主張する。しょうがないなー、と岩泉は折れた。
裁縫箱のふたを開ける。
見守る花巻の前で、ごく器用に針と糸を扱う。
「……できるんだな」
「自分で頼んどいて何言ってんだお前は」
「あざっす」
「授業でやるんだもん。これくらい誰でもできる」
口を尖らせながら糸足を作っている。
童顔だなあ、と花巻は思った。背の丈は標準か、ちょい高めかくらいなのだが、まっすぐな気性のせいか、岩泉は怒った時と笑った時は幼く見える。逆に、試合中はぞっとするほど大人びて見える瞬間があった。背負うもののせいかもしれない。
「何見てんだよ」
布を刺す手を止めずに、岩泉が絡んできた。
「別に、なんでも」
そうだ。
「それできたら、勝負しようよ」
アームレスリングのである。
別にいいけどさあ、と岩泉。
「今やったら、密室に二人で手を握り合う男女になるんじゃねえの」
手元に目を落としたまま言う。
花巻は、その岩泉の伏した目の、うつむくと長く見える睫のあたりを、じっと見ていた。
泣いた顔は、見た事がない。いや、涙ぐむくらいまでなら、見たっけか。幼くなるというよりも、なんだ。
性別が。
性的な。
ああ、言ってしまえば、エロかった。
いやエロいは違うな。違わねえけどアレだ。
なんだ。かわいかった。
「……なってもいいかなーと思って」
つぶやくと、岩泉は針を指に刺した。
「……なってもいいかなーと思って」
つぶやくと、岩泉は針を指に刺した。
「いてえ」
「な、何やってんの」
だいじょうぶか。
「おまえのせいだ」
と言って、岩泉は人差し指の先を唇に含んだ。俯いている顔が赤い。
一瞥もくれないのではなく、目が合わせづらいという様子に、花巻は立ち上がった。
暑い。
窓を開けに行く。
耳の裏で血管のどくどくいう音がよく聞こえた。
なんだこれ。
窓を開けると、冷たい風が頬に心地よかった。
あーなんだこれ。これはなんだ。死にそう。
がちゃん、と音を立ててノブが回り、勢いよく扉を開けながら及川が現れた。
「あ、岩ちゃん!ごめん今掃除終わった―…て、何この空気」
「おいかわ」
岩泉が平仮名の発音で言う。うなじも赤くなっているのが、花巻の位置から見えた。
は、はずい。
心底はずい。
「空気、今変えてるとこ」
気まずさに半眼になりつつ、そう答える花巻の顔も、いまだかつてなく赤い。
「岩ちゃん、それ何してんの」
「あ、これ、花巻のボタンつけてやってんの」
「ふうん」
及川は岩泉の隣に座った。手元をじいっと覗き込む。
「見んな、もう終わる」
花巻のできない玉止めをくるくると施し、岩泉は糸を切った。
「で、何だって?」
「…コーチが、これ岩ちゃんに渡しとけって」
「DVD?」
「インカレの」
「あっ、今日皆で観るやつ。ありがと」
岩泉が及川の手からディスクを受け取る、その反対側の手で「ほい」とコートを投げられて、花巻は「どーも」と受けとめた。
「マッキーそれ大丈夫?着れる仕上がりになってる?」
「大丈夫みたい」
「岩ちゃんは大体壊すのが専門で創作や修繕には向かないから」
「失礼な。お前の肋骨を破壊してやろうか」
「い、痛い痛い、殴んないで」
岩泉の拳は早くて重い。椅子の上を這って逃げる及川に、ふん、と鼻息をついて岩泉は手を引っ込めた。
荷物をまとめて肩に担ぎ上げると、
「じゃあな。部活がんばれよ」
と言って颯爽と出て行く。
「もう、短気なんだから」
及川は小突かれた脇腹をさすりながら不平を言っている。
こいつ、どうなんだろうなーと思いながら花巻が見ていると、及川もくるりとこちらへ顔を向けた。
「生理中でもないのにねえ」
「………」
「岩ちゃんに生理きたのは中学入ってすぐだったかなあ。ショック受けてたよねえ」
「…………」
さ、さいてー。
花巻は引きすぎていっそ哀れむような視線になってしまう。
「……ろくに女の尻追っかけた事もない奴は、牽制も下手だな」
かわいそうな物を見る目で吐き捨てられ、及川は自分のロッカーの中へ逃げようとした。ガタガタとうるさい。
「やめんか、壊れる」
「……あの、マッキーさん。じゃあ、どう言えば上手い牽制になるんですかね」
頭を半分ロッカーに突っ込んだ馬鹿からの問いに、そうだなあ、と花巻は考えた。
「『知ってるかい、あいつ寝るときは下着をつけないんだぜ』とかそういう感じなんじゃないの。なんか洋画で言ってた気がする」
「そうか」
及川はロッカーから頭を引っこ抜いた。顎に手を当てて考え込む。目を閉じてそうやっていると、確かに美しい顔立ちをしているのが、かえすがえすも残念だと花巻は思った。
やがて、及川が目を開く。
「……マッキー、知ってるかい」
思いついたらしい。
「何を」
「岩ちゃんは………、」
及川は、無駄にもったいぶって間を空けてから、言った。
「素手で林檎が割れる」
「マジで!!??」
花巻は普通にびっくりした。
「花巻ってさ」
「花巻ってさ」
と岩泉に切り出され、及川は内心おっかなびっくりした。
花巻、の名を出した瞬間から、頬っぺたを赤くしているし。なんなんだ、と及川はおののく。
「たらしなの?」
たらし。
女たらし。
それは、そうなんだろうか。
頬張っていたピザまんを飲み下してから、「俺ほどじゃないと思うけど」と答えになってない答えを返せば、岩泉はすーっと静かな顔になった。
どんびきされている。本日二度目に味わうこの冷たい感じ。
「お前はたらしじゃない。どっちかっていうとただの馬鹿だ」
褒められているのだろうか。貶されているのだろうか。
「このモテ男に向かって…」
ぶつぶつ言いながら一個目を全部口の中に入れると、
「受動的なのはたらしとは言わない。いっぺん自分で告白してから言えこの馬鹿」
痛いところをピンポイントに突かれた。
「…お前、もしかして、初恋まだなんじゃないの」
トマトソースが喉の奥に引っかかる。岩ちゃん、なんてこと言うんだ。
そんな及川の横で岩泉は、肉まんをもぐもぐと暖かそうに食べている。
日の暮れた公園のベンチだ。寒い。二人の間には中サイズのコンビニ袋が置いてある。中身はホットスナックだ。寄り道のお供である。
「…初恋くらいやってるよ」
「それはちゃんと好きだったのかよ」
「…その子のことばっか考えて、頭の中その子でいっぱいで、夢にだって何度も見たよ」
ああ、なんてことを言ってるんだろうか。頭を抱えたい気持ちをこらえ、及川は勇気を出して隣を見た。岩泉も及川を見ていた。街灯の明かりで三白眼の中、黒目がきらきらしている。ちっちゃい鼻、凶暴なお口、肩は抱き締めれば見た目以上に華奢でどうしようもない事を知っていた。心臓の奥の方から、ごりごりごりとやばい音がする。初恋は。多分一生終わらないんじゃないだろうか。
「ふうん」
気まずそうな相槌を打って、岩泉は目を逸らした。こういう話がそもそも苦手なのだ。なのに珍しく花巻のことだとか及川のことだとか、くちばしを突っ込むからこういう目に合うんだよ。
及川は攻勢に回る事にした。
「そういう岩ちゃんでしょう、初恋もまだなのは。今時ないわ」
「うるせー」
とぱくぱく肉まんを完食して、ふと、遠くを見る目になる岩泉。
「あ、あるかも」
「?なにが」
「初恋、あったかも」
攻めに転じたはずがぶっとばされた。及川の腹に風穴が空く。
「………」
返す言葉が、ない。
「その人のことばっか考えて、頭の中いっぱいで、夢にも見た時期あったや」
「誰だよ」
「ウシワカ」
及川は叫んだ。
「それ違う、それは、違うから、いわちゃん!!!」
もうほんとほんっとやめてよね。ついに蹲ってもがきだす及川の背を、ぽんぽんしてくれる岩泉の手は優しかった。
その顛末による影響あってか定かでないが、翌日及川は発熱した。
その顛末による影響あってか定かでないが、翌日及川は発熱した。
「うそだろ」
「嘘じゃないわよほら37度8分。日曜日でまあ良かった。今日はゆっくり休みなさい」
「寝てたら治るよね?」
「だといいけど、明日もダメなら病院ねえ。あ、練習試合あるって言ってなかった?」
「あれは来月」
「ならいいか」
よくないよ!と親相手に喚いても、自己管理の不行き届きだ。及川は泣く泣く日曜練習欠席の連絡を入れた。来月頭の練習試合は去年のベスト4相手なのだ。白鳥沢にストレート敗けを喫したものの、公式戦で善戦を見せたレギュラーが来る。万全で望みたい。体調も、対策も。
「お母さん今日はパート夕方まで入れちゃってるから、ごめんね。お粥作っとくからね」
「あ、うん。だいじょぶだよ」
及川は全力で頷いた。
「寝てればいいんだから!」
そう?と首を傾げながらも、母親はポカリを用意してくれ、そして出て行った。
数時間後。
「何やってんだてめえ」
数時間後。
「何やってんだてめえ」
地を這うような声に、PCに向かっていた及川徹は戦慄していた。
モニタからの歓声が、しんと静まり返った六畳間に響く。着込んだ半纏の肩を抱き、震える及川に岩泉が迫った。
「何やってんだ?あん?」
「す、すみません」
岩泉の手が伸びて、動画を停止しウィンドウを閉じる。続いてイジェクトボタンを押されて及川は焦った。
「待って岩ちゃん、眠くないから起きてる間見るだけだから、おとなしく見てるだけだから」
岩泉は床に転がっているケースにDVDを仕舞いながら、「寝ろ」とにべもない。
「どうせゆうべもこれで夜更かししたんだろ」
「もう1ローテ見たらなんかわかりそうなんだよお。ウシワカのスパイク連続で止められたとこなんだよ、こいつらのとこに来週行くんだよ。身体動かせないのに寝てられないよ」
「聞こえねえのか。寝ろ」
岩泉の鞄にケースを仕舞われて、及川は絶望した。
「岩ちゃん俺のこと応援してくれないの!?勝ちたいんだよ全部。来月も夏も春も、飛雄にもウシワカにも」
「応援か」
岩泉は腹に縋りつく及川を見下ろした。
「ずっと一緒に戦ってるつもりだったけどな」
乱暴に振りほどかれる。
床に尻をつく及川に一瞥もくれず、岩泉は部屋を出て行った。
「ごめん」
呆然と呟く。
階下で、ごそごそと動き回る気配がする。
及川は部屋を出た。階段を下り、気配を探して台所を覗くと、岩泉が鍋のふたを開けたところだ。
「食ってねえじゃん、馬鹿」
「ごめん。ありがとう」
「卵入れてやろうか?」
振り返る岩泉は、眉間に深い皺が寄っている。
「ありがとう」
「別にいいよ。あ、卵あっかな」
冷蔵庫を勝手に開ける。卵を取り出して茶碗を用意する岩泉を、後ろから抱き締めた。
「ありがとう」
「おい、やめろ。別にいいったら、こんぐらい」
「そっちじゃなくて」
頭に頬擦りをする。甘い匂いがする。胸にしまっておけないくらいの感情が喉をぶち破りそうだ。岩ちゃん。岩ちゃん。岩ちゃん。岩ちゃん。
下腹部に、衝撃が走った。
「がほ…」
肘鉄を撃ち込まれたのだ。岩泉は、赤い顔で及川をそれはそれは凶悪に睨み付けた。
「な、なんつーか、おまえ。こういう、彼女にするみたいなことをオレにすんな」
「えええ、付き合ってなくてもこのくらいは」
「そうじゃなくて、女にするような事を、オレにするな」
片膝をつき、ずきずきする下腹を庇いながらも、及川は抵抗した。
「女だからじゃなくて岩ちゃんだからするんじゃん。岩ちゃんがたとえ男でも俺はするよ」
開き直られ、うう、と岩泉は言葉をなくした。
「そ、そんならいいけど」
いいのかい。
及川は、立ち上がった。両腕を広げる。
色々と耐え切れなくなった岩泉の手が、卵を握り潰した。下から及川を睨みつける形相が鬼神めいてくる。腕まくりした二の腕に、血管が青く浮いていた。岩泉の握力と背筋の数値は尋常でない。その戦士が、虎の如く吠える。
「寝てろ。あと、靴下をはけ!」
及川は、おとなしく言われた通りにした。
布団で待っていると、岩泉が盆に粥を乗せてもってきてくれた。
布団で待っていると、岩泉が盆に粥を乗せてもってきてくれた。
「俺は果報者だよお」
「本当にな」
溜息をつかれる。
「おいひいな~」
と、またたくまに皿を空にしてゆく及川に、岩泉は疑わしげな表情だ。
「お前本当に熱があるんだろうな」
「元気なんだけどねえ」
「そんな感じでしょっちゅう身体壊すんだから、気を付けろってんだよ」
「わかってるよ」
岩泉は空になった皿を階下へ下げ、更に何かを持ってきてくれた。
「りんご、摩り下ろしてくれたんだね~」
「好きじゃなかったっけ」
「大好き。さすが岩ちゃん」
「まあこの程度なら?」
破壊専門のおれでもな?と、嫌味を言われても、上機嫌すぎて気にならない。
雲の上にいるような心地すらする布団の上で、皿に口をつけてりんごを啜り上げ、ふと見ると岩泉は床の上に寝転がっていた。
及川の布団の上に頬杖をついて、こちらを見ている。
うーん、この子はなあ、と及川はちょっと、危機感に、胸の内が焦げた。
岩泉は黒デニムにスカジャンの普段着だ。投げ出した、足首が細い。
「岩ちゃん…」
「ん?」
「あー。いや、女子は今日練習なかったの」
「うん」
頷いて、岩泉は及川の膝の付近に突っ伏した。
「午前中だけ、自主練」
「そうなんだ。おつかれ」
「お前も、早く治せ」
及川は手を伸ばした。岩泉の丸い頭を撫でる。
「やめろ」
と岩泉が唸った。
「なんで」
「お前の手、眠くなる」
そうかい。
時が止まるような事を言わないでおくれよ。
「……じゃあ、眠れない時は、俺を呼びなね」
「呼んだら来るのかよ」
「どこへでも行くよ」
「マジか」
岩泉は布団に半分顔を埋めたまま、くくくと笑った。致命傷になるような笑顔だった。
そうして硬直する及川を尻目に、頬をまた布団に預け、完全に目を閉じる。
んー、とうなって、身体を丸めた。
見守っていると、どうやら、寝息のようなものが聞こえてくる。
まさかだよ。と思い、及川は更に見守るが、状況は落ち着いて変わらない。
マジかはこっちの台詞だよ岩ちゃん。
月曜の朝練には体調が間に合った。すっかりすっきりと平熱に戻った及川に、岩泉にりんごを食べさせてもらった話を聞かされて、及川母がとても複雑というか、なんだかなあというか、よく部員や学校の友達から向けられるのと同じ表情をされたのが、及川的には印象的であった。
月曜の朝練には体調が間に合った。すっかりすっきりと平熱に戻った及川に、岩泉にりんごを食べさせてもらった話を聞かされて、及川母がとても複雑というか、なんだかなあというか、よく部員や学校の友達から向けられるのと同じ表情をされたのが、及川的には印象的であった。
もちろん部活仲間には歓迎された。同学年からは、しっかりしろよな、と釘も刺される。面目ない。気をつけます。平身低頭である。
もっとも、花巻から「知恵熱?」と聞かれたときには「そうかもねー!!」と食ってかかり掛けた。情けなさ過ぎるので我慢したが。
「岩ちゃんの握り潰した林檎食べたら治ったよ」
からからと笑ってみせると、花巻は苦い表情で一歩下がった。
「てめ、上手く言うようになったじゃねえか…」
「なにが?」
問う及川の後頭部が、鷲掴みにされる。
「お前の頭を握り潰してやろうか」
岩泉の登場だ。
「きゃっ、岩ちゃん」
背筋を伸ばす及川の周囲で、下級生らが色めきたった。
「あっ、岩泉さん!」
「岩泉さん!」
「岩泉さん!おはようございます!」
「はよざいます!!」
「ねえなんで皆俺にするよりより挨拶丁寧なの!?」
松川に肩を叩かれる。
「自分の胸に、聞いてみようか」
いいから座れ、と、頭に置かれた岩泉の手から圧がかかってくる。
「はーい」
おとなしく壁際の地べたに座り込むと、岩泉は手にしていた弁当箱サイズのタッパーを差し出してきた。及川は受け取る。琥珀色のものが中で揺れている。
「わ、はちみつレモンだ」
「お前はそれでもしゃぶっていろ」
言い捨てて、岩泉はきびすを返した。きゅ、きゅ、と体育館の床を踵で磨きながら去ってゆく。花巻が呟いた。
「抱かれてえ」
タッパーを開ける。覗き込んだ下級生らが歓声を上げた。
「ま、まさかの四分割」
「男のはちみつレモンだー!!」
及川は半笑いで、ひとつ口に入れてみた。見守る花巻が問う。
「初恋のお味はどうですか」
「皮が苦いよう」
それでも四方八方から手が伸びてくる。タッパーの中身は、すぐに空になった。
おしまい
おしまい
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