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2025/01/10 (Fri)
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2014/02/11 (Tue)
「必殺マーメイドスプラッシュ」
Comments(0) | ハイキュー!!
岩ちゃん女体化の及岩で牛岩です。
場面が変わるごとに、一人称と三人称がごっちゃになってしまいました・・・なんとなく!
明るいバカなエロい話が書きたかったにょたいわちゃんなのに、なんかすごいしんみりがまざってくるようになって、どう軌道修正したら。もういいかこれで。そんな勢いです。








必殺マーメイドスプラッシュ








バレー部では、毎日走るのだが、その前に30分以上かけて柔軟を行う。
体育館の床に開脚でべっとり、額をつけてうんうん言っている花巻に、及川が近付いた。
「マッキー、来週の月曜ヒマって言ってたよね?」
「うん?」
花巻が身体を起こす。柔軟体操は半ばまで指導されるが、そこから後は自由にアップしてよいことになっているので、しばしば雑談も起こる。度が過ぎればもちろん、顧問なりコーチなりの怒声が飛ぶ。
「T女の三年で遊んだ事あるコからさー、誘われたんだけど、今ちょっと俺別れてすぐじゃん。なんかなーと思ってたら、友達紹介してほしいみたいなんだよね。んで、合コンしようかって話してんだけど、どう?」
「え、俺行っていいの」
「いいよー、てか、スポーツマンがいいらしいからなんか期待されてるので、来てよ」
及川は花巻の横に腰を下ろした。右足を伸ばし、その腿の上に左足首を乗っけて、シューズの靴裏から手で鷲掴んでぐるぐると足首の関節を回す。
「じゃあ行く」
「まっつんも誘うよお」
「合コンて何すんの?」
「まだ考えてないけど、多分カラオケ」
「ふうん」
花巻は、及川の回る足首をなんとはなしに見つめた。
「しかし、お前、必死だな」
言うと、ぶふっと軽い破裂音がすると共に、及川の鼻から鼻水が飛び出た。
「おい・・・」
大丈夫か。
及川はばたばたと足を崩し、手の甲で洟を啜った。
「ふぁ、ふぁんてこと、いうんだよ。あっ、まっつんとこ行ってくる」
「その前に鼻かんでこい非モテ川」
「ちきしょう、おぼえてろよ」
何をだ。呆れて口が半開きになる花巻に見送られ、及川は手洗いの方向へ走り去っていった。










「及川、月曜ひま?」
その日の帰り道にこう尋ねられて、俺はぎくしゃくと岩ちゃんを見た。岩ちゃんは、他意のない顔をしている。
「え、なんで?」
「プール行かねえ?」
「プール?」
今何月だと思ってんの?
訝しがると、岩ちゃんは「水ヶ森だよう」と聞き覚えのある施設名を出した。やや遠くて生活圏外だが、大きな温水プールに学割のつくところだ。
「おれ最近筋肉痛取れにくくて」
「だめじゃん」
「部活休みの時に筋トレだめって監督に言われたから、色々聞いたらプールがいいって」
そうなんだ。と相槌を打ちながら、脳内に岩ちゃんのの競泳水着姿を思い描いた。似合いすぎる。
岩ちゃんは泳ぐのが、非常に達者である。水に放たれた魚のように泳ぐ。プールもいいけど、海のほうがいいな、と思う。岩ちゃんは自然が大好きだ。とても嬉しそうに泳ぐのだ。小学生の時からずっと見ている。あんなに魅力的な生き物はいない。
「だから一緒にどうかなって」
とお誘い下さるその顔に、水滴がいくつもくっついては滑り落ちると、俺はどうしたってくらくらしてしまうんだよなあ。プールかぁいいなあ。岩ちゃんの身体はとてもきれいだ。水の中で泳ぐなんて格別だ。
しかし。
「うーん、月曜は予定あるんだよ」
「そっか、じゃあ、一人で行こう」
「及川さんがモテるばっかりに、ごめんね」
「・・・そうか、女か」
岩ちゃんの声がすーっと低くなり、俺の顔色はさーっと蒼くなった。
「い、いや、そうゆう」
「お前ほんと、いい加減にしろよとは言わねえけど」
「ちが、ちがうって」
「ちがわねえだろう。眼を見ればわかるんだよ」
「どんな能力者だよ岩ちゃん!」
「クソ川のことなら何でもお見通しの能力」
太刀で割るように言い切って、岩ちゃんは前を見て歩く。
「岩ちゃん」
手足の指先に、血が通わなくなったかのように、末端が冷たい。
早足で追いかけて、岩ちゃんが着ている学校指定コートの肘のとこを捕まえる。
「岩ちゃんは俺のこと、案外わかってないと思うよ」
そうかもな、と岩ちゃんはけっこう簡単に認めた。
「でも、お前が初恋の子のこと、今でも好きなのはわかる」
大きな溜息をつかれる。
俺は溜息どころじゃなかった。








50メートルのレーンを一往復して、岩泉はプールサイドのベンチに座った。キャップとゴーグルを外して時計を見る。時間を確認して、手首をぐるぐる回してほぐしていると、
「本調子ではないみたいだな」
と話しかけてくる者があった。聞き覚えがあるようなないような声に横を見ると、牛島若利が立っていた。189センチはでかい。ただでさえ腰を下ろしていた岩泉は、思い切り見上げないと、顔まで確認できなかった。
牛島が、隣に座った。髪の毛から水がしたたり落ちている。水滴の乗った肉厚の肩を上下させて、ふー、と一息ついた。泳いでいたらしかった。
「牛島?」
確認する。巨大な体格の上に乗っかった頭をこくりと頷かせて、相手は身分を肯定した。
岩泉は人差し指で相手を指し、言葉を探し、見つからずに、指を掌に返して自分の目元を覆い、俯いた。
ええええーーーーと。
なんでいんの。
「・・・・・・牛島も、自主トレで泳ぎに?」
「そうだ」
たまにな、と微動だにせずに言う。
「・・・ちょ、調子は、どう」
「今は疲労を抜いている。お前と同じだ」
低い声が、運動の直後で掠れている。わんわんと屋内プール独特の反響音が響く中で、耳を痺れさせるような声だ。
牛島が岩泉を見た。岩泉は声をかけられてから、ずっと牛島を凝視していたので、視線がぶつかる。岩泉の目は、まん丸になっている。
牛島は、一度そうやって見てから、すぐ視線を逸らした。
二人の前方にある、飛び込み台の根元あたりを睨みつけている。
「お前は何故、男に混じって試合に出ていたんだ」
唐突に切り出され、岩泉の目がせわしなくまたたく。
「え、それは。小学生の時の話?」
そうだ、と牛島は頷く。
「思い出した。先日は失礼した、岩泉」
「う、え、いや。・・・う、ううー」
岩泉は唸って、足の指でビニールの床をなぞった。滑り止めの細かい凹凸を、小さい足指が触っている。動くところについ目を向けてしまい、牛島は再度、慌てて目を逸らした。
「・・・小学生の時の、あの、うちのチームは色々と、・・・いい加減で」
「・・・いい加減にも程があるだろう。・・・一応確認しておくが、お前は、その、」
横を見れば、ぽかんと呆けたような顔をした少女がいる。硬度よりもしなやかさを感じさせる筋肉の上を、白くてまろい脂肪が覆っているのがわかる。黒いぴったりした水着がきゅっとその身体を締め付けて、内側からその圧を押し返す健気な肉の形が、いじらしいまでに女の子だった。
一言でいってしまえばいい乳と尻をしていた。
それに、どうしても上から見下ろすかたちになってしまうので、腰掛けている足の、腿の、付け根の、腿と腿の間の隙間から青いベンチの地が見えるのだ。直視は難しかった。
「女なのかと・・・女、だよな、いや、すまん」
「いや、いいけどよ」
牛島の視線が色々とうろたえては彷徨っているのに気が付かず、岩泉は当時のことを思い出していた。
「うーん、チーム入った時には書類に性別書いたと思うんだけど。あたしは男子と一緒に遊んでばっかだったから、そっちに集合して、それで見た目も完全に男子だったから、そのまま特に確認されなくて」
「ず、杜撰すぎるだろう!」
憤った牛島はしかし、
「助かったけどな。お前ともやれたし」
と一言告げられて怒気が殺がれた。
岩泉の声が少し寂しげだったせいもある。
隣で俯く気配がして、「そうか」と答える声が、少し硬くなった。
「負けたけどな」
ゴーグルのゴムを弄りながら岩泉が言う。
だから、動いていると、目を向けてしまうというのに。
指先の細さが目の毒だった。肩を落として下を向いている様子は、いつか見た試合前の存在感のでかさを思えば驚くほどに小さく見える。前髪からしずくが、ほとほと膝に落ちていた。光って見えた。
「ああ。あたしが男だったらなあ」
ふん、と鼻を鳴らして、牛島は再び、飛び込み台の根元へ目を戻した。
「ないものねだりか。男だろうと女だろうお前に変わりはないだろう。成すべきことを成すのみだ」
そう言うと、脛を蹴っ飛ばされた。
「何をする」
「悪い。及川にも似たような事言われたからムカついた」
及川。
「及川か」
名を呼ぶ声に、惜しむ色が混ざった。
「うちに来ていれば確実に、一桁を背負っていただろうが」
「それこそ無い物ねだりだろ。あいつはバカなりに小賢しいし頑固だ。決めた事は覆さねえよ」
「ふん」
そこで会話を断ち切って、牛島は立ち上がった。50メートルのレーンへ歩み寄っていく。続いて、岩泉も立ち上がった。後に続く。
無言でついてくる、その後ろから、背中が焦げ付くような殺気を牛島は感じた。いやな予感がした。
グラブスタートで水中へ飛び込むなり、凄まじいデッドヒートがまきおこり、結果驚くべきことに僅差まで追い上げられつつも、煽られてマジが出た牛島が勝利する。
「化物か貴様は」
元いたベンチに腰掛け、重たい体を震わせながら言うと、
「ち、ちきしょう。おれが男だったら、だったら」
「まだ言うか。お前が男で試合に出たら、白鳥沢に勝てるとでも言うつもりか」
「・・・って事はお前、今の青城の男子じゃ白鳥沢には勝てねえって言ってんのか」
そうだ、と牛島は肯定した。
「例え及川徹を擁しようが、俺のチームには勝てない」
「そうかもしれないけど、わかんねえだろう」
あえぎ声交じりに、岩泉が食い下がる。会話にならない、と牛島の腹の中に苛立ちが積もった。つい、言葉に棘が出る。
「それを言えばそちらこそ、青城がうちに勝つ根拠の一つでもあるのか」
「根拠なんてもんじゃないけど、及川は、おれとの約束は破った事ねえから」
ぞっとするほど強い光を放つ瞳で、岩泉は言った。
水中を泳ぐ彼女は魚のようだった。前に進むためだけに生きていた。葛藤よりも呼吸よりもただ前へ。見蕩れてしまいそうになるものがあった。
「・・・詮索する訳じゃないが、及川とは、付き合って」
「ねえっつってんだろ」
岩泉は、あろうことかベンチの縁に踵を乗せながら言った。
狭いところで体育座りをしているような形となり、ふくらはぎがふっくり丸く外に押し出されて、横目で見てしまった牛島は目玉が飛び出しそうな心地を味わう。
胸に寄せた太腿(白い)に胸が押しつぶされて、窮屈そうにあふれている。ゆるく膝を抱えた腕が細い。指先でまた、ゴーグルをもてあそんでいる。
女子の水着姿など、見たことがないわけじゃなし、年頃なので人並みとまでは行かずともグラビアだの深夜番組だの、それなりに目にはしてきているのだ。しかし、隣で何気なく繰り広げられているこの光景は、ちょっと。
「・・・そう見えるかなあ」
と、岩泉がぽつりと零した。
「うん?」
「及川とあたしって、あんまりそういう関係には見えないと思うんだけど」
牛島は答えに詰まった。とても、見えると、思うんだが。
「あたし、あんまり女ぽく見えないだろ」
「ん、うん?」
確かに女性らしいと言うには、いささか、雄雄しすぎるとは思いもするがしかし。
岩泉はようやく、足をベンチから降ろした。降ろしたら降ろしたで、すうっときれいな曲線が動いては床に着く様子は、見ている者の心臓によくない。
抱えた足に圧迫されていた乳房が、開放を喜んで綻ぶ花のように、ふくん、と元の綺麗な丸いかたちになる。
牛島は、ようやく目を逸らした。口元を、手で覆う。喉がひとつ動いた。
「周りからもあんまり女って見られてないし、見られてないっていうか、実際ほとんど男みたいなもんだし」
「・・・・・・俺には、そうは見えないが」
ぽろっと声になってしまった。
え、と発して、岩泉がこちらの顔をじっと見てくる気配がする。
ああ、面倒くさい。うかうかと及川とどうなのかとか、つい問うてしまった自分が悪いのだが、男だとか女だとかそういうくだらない方面へ、なんで話が行ってしまったのか。
やっと逸らした目を、また岩泉に戻す。びっしょりと塗れた髪が、首から鎖骨までへばりついて、短い前髪もちらほらと額や耳にはりついて、そこから滴り落ちる水滴がちかちかと光って見えるのだ。
唇は何か問いたげに、一度薄く開いて、それからきゅっと閉じた。
瞳が今は、困ったような、疑うような、揺れる色をしている。
なんだかその色を見ていられなくて、下へ視線を落とすと、黒い競泳用の水着がきゅっと締め付けている胸の辺りが目に入る。少しだけ食い込んでいる水着の縁からは、はじけそうな白いやわい肌が、
「ど、どこを見て、言っている」
顔を赤くした岩泉が、胸元への視線を腕で遮った。両腕で抱くようにし、背を向けるようにやや体を斜めにして、牛島を睨み付ける。
「ち、ちがう」
牛島は蒼白になった。がたん、とベンチから立ち上がる。反動で岩泉は少しこけそうになった。
「ご、誤解だ。決してそういう目で」
数歩離れてから弁解し、言葉に詰まり、
「そ、そういう意味で、言ったのでは」
更に4、5歩後ずさる。
「お、おい」
「ちがうんだ、ただ、俺は、き、」
きれいだから。と口から出かけたところで、プールの縁を踏んだ。滑る。
牛島の後進を止めに手を伸ばしかけていた岩泉の目の前で、巨大な水柱が上がった。





盛大に震えている岩泉の肩越しに、牛島は呻いた。
「笑うな」
「わ、笑ってない」
「嘘をつけ」
岩泉は、膝から床に崩れ落ちた。
「ご、ごめん。でも、だって」
県内最強、国内指折りの怪童、あのウシワカが、監視員のおじちゃんに怒られるとか。
「ごめん、なんかごめん。でもちょっと待って」
痙攣する腹筋を押さえ込み、何とか持ち直した岩泉の背に向かって、
「・・・・・・及川には言うなよ」
念を押されて、再び岩泉の腹筋は崩壊した。












バスの中ほどの席で、ぼんやり座っている岩ちゃんを発見した。
「岩ちゃん」
呼びかけると、「及川」とこちらを向く。少し詰めてもらって、横に腰掛けた。隣り合った肘が触れ合う二人掛けだ。
「泳いできたの?」
問うと、岩ちゃんは頷いた。
「うん。そっちは遊んできたの?」
「うん」
「買い物?」
「さあて」
何をしていたでしょうか、と勿体ぶると、「うぜえなあ」と罵声を浴びせられた。
「及川さんの事なら何でもわかるんでしょう」
岩ちゃんは膝に抱えた蛍光グリーンのワンショルダーを、ぎゅっと抱き締め、枕にするようにおでこをくっつけた。羨ましい。
「おれはたくさん泳いで眠いんだよ。これ以上疲れさせんな」
「さては岩ちゃん、妬いてるな?」
「あっち行って下さい。気持ち悪いです」
「ちょっと、敬語やめてよ」
「喋らないで下さい、息くさいです」
「精神攻撃やめてよ及川さんの吐息はミントの香り、ちょっと押さないで!」
と、バスの運転手さんからミラー越しに一睨みされたのを見てしまい、俺は口を閉じた。すると、岩ちゃんも同時に静かになる。顔を覗きこむと、確かに疲れているようだった。
「岩ちゃん」
今度は、穏やかに呼びかける。
「何かあったの」
「なんで」
眠たそうな声で言う岩ちゃん。
「俺はね、岩ちゃんの事なら何でもお見通しなんだよ」
「パクんな」
「うん」
本当はね、岩ちゃんの事が一番わからないよ。君のことを知りたいと思うだけで俺は、心臓が、いくつあっても足りない。
「ウシワカ、おれのこと憶えてた」
岩ちゃん。
言っている意味が、わからないよ。
「ウシワカちゃん?」
「ん」
こっくり、岩ちゃんがあどけない頷き方をする。
「会ったの?どこで?」
「プールにいた。偶然」
ぐらっと、頭が沸騰して血が飛んでしまったような感覚に陥る。
「そうなんだ」
岩ちゃんは、前の座席を見ていた目線を、窓の外へ移した。電信柱や民家の屋根が、夕暮れなずむ空ごと赤くなりながら後方へ飛んでゆく。
「前に地区大会の抽選の時、なんか偶然会って、憶えてなかったって言ってなかったっけ」
「よくわかんねえけど、あの後、思い出したみたい」
小学校の時に何べんか試合しただけなのに、すげえな。と岩ちゃんは目を細めた。
「夏は、うちが勝つよ」
「頼む。今日おれ、うっかり啖呵切っちまったから」
「ちょっと何してくれてんの岩ちゃん」
「いいじゃん、勝つんだろ」
「それはそうだけどさあ」
口を尖らせながら、岩ちゃんの肩へ頭をもたせかけた。
重いよ、と苦情を言いながら、岩ちゃんも俺の頭へ頭をのっけてくる。
「今日は俺ら、合コンだったんだよ」
「俺らって?」
「マッキーとまっつん」
「なんかモテそうだね」
「モテモテですがな」
「こんどは、おれもつれてって」
いいよ、どこへでも、一緒に行こうね。
岩ちゃんの髪の毛からただよう水の匂いが狂おしく、どこまでも眠れなかった。




おしまい

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