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2012/02/12 (Sun)
「●デアマイン」
Comments(0) | ES21:双子
212デーに更新したくて・・・ぎりぎりまでねばりましたが、あとでちょっと加筆するかも。
続きに阿雲話です、こいつら100%できあがってるいちゃいちゃ伝説です。











デアマイン


18時頃に着く、と連絡しておいたのだが、ぎりぎりで一本前の新幹線に間に合ったため、予定よりだいぶ早くに着いた。
雲水はエレベーターの中で腕時計を確認する。15時20分である。駅から弟にメールしておいたのだが返事はなかった。一度訪ねて、不在であれば、来る時見かけたコンビニへ戻って時間を潰そうと思う。
弟の部屋は最上階だ。左手に曲がると、通路がぐるりと半円描いていて、手摺から下を覗き込むとくらむような吹き抜けである。以前、デザイナーズマンションというからには、高名なデザイナーが設計したビルなんだろうと言ってみたら、弟に鼻で笑われた。「べっつに、凝ってるくらいの意味じゃねえの」だそうで確かに凝っている、高級そうである。
携帯が着信を知らせて鳴り始めた。
「はい」
『もう着いた?』
「ちょうど、玄関前に来たところだ」
『マジで。10分待ってて』
「うん」
手摺に肘を乗っけて風景を見る。視界を下へ移すと、駅に近い往来を行き来する人もよく見える。
弟が小走りに来る姿も、きっとわかる。
多少奇抜だが良い建物だと、雲水は頷いた。




「らっしゃい」
阿含は兄を見つけると、白い歯を見せて破顔した。
んー、と言いながらハグしてくる。「あ゛ー汗臭ェかも」とすぐ身を離すが、さっき小走りどころでない早さで駆け込んでくる弟を上から見ていたので、雲水は全く気にならない。「別に」と言って笑うと、阿含は眩しいものを見る目をした。
「いちゃつくのは中でな」
と浮かれた宣言をしながら、プラスチックのカードキーで解錠する。雲水は返事をしない。
「買い物してシャワーしてから迎えに行くかと思ってたんだけどさ、かいもんは後でいーか」
「夕飯?」
「トイレットペーパーがもう1週間くらいないの」
「1週間は長い」
「ちょいシャワーあびてくる。適当になんか飲んでな」
「ん」
雲水は返事をしながら、まじまじと弟が床に投げたグリップバッグを見ていた。白地に黒のロゴが浮いているエナメル素材だ。開いたチャックの向こうから、くしゃくしゃのトレーニングウェアが覗いている。




バスルームから水滴を垂らしながら出てきた阿含を、雲水は見咎めた。
「おい」
弟の肩にかかっていたバスタオルをはぎとって、頭に被せる。優しく拭いてやる。
阿含は今にもごろごろと喉を鳴らしそうな顔をした。
「ジム、通ってるのか」
指摘したとたん、猫の顔に険呑な陰影が降りる。
「カスのメニューがな…」
「ヒル魔の組んだメニューに、ちゃんと従ってるのか!おまえが!」
「うっせ、ちゃんとじゃねえよ従ってねえよ。目的が一致しただけだ」
「そうか…」
タオル地が優しい力で阿含の顔を拭った。
「ヒル魔はキレるQBだ。お前を生かせるだろうな」
「はあ?」
「二人とも俺がまとめて薙ぎ倒すつもりだけどな」
「コエエ」
阿含は犬歯を見せて笑いながら、バスタオルごと兄を抱きしめた。
「なー、今ちょっと嫉妬しただろ」
「馬鹿を言え」
雲水は顔を傾けて、阿含の鼻に噛みついた。阿含は甘んじて受ける。腰を抱く手は緩まない。




雲水はせわしなくリモコンを操っている。チャンネルを一巡してから、電源を切ってソファに背を沈めた。
「なあ」
と、隣の弟が寄りかかってくる。
「雲子ってさ」
「なんだ」
「嫉妬とかさ…」
半眼で睨まれたが、最後まで言う。
「しないの?」
雲水はそっぽを向いて、弟から逃げるようにソファへ半身を投げた。
「すんの?」
重ねて問うたが、無言しか返ってこない。
阿含は兄に覆い被さった。
「うーんーすーいー」
顔の下に敷いて表情を隠している腕を引き剥がしてやれば、軽蔑といってもいいぐらいの見下した眼差しがじろりと向けられる。ドキッとした。正確にはビクッとした。
「お前は」
と雲水は、重そうに口を開く。
「俺が嫉妬しないと思うのか」
「……」
阿含は握りこんだ兄の拳に口づける。
「離せ」
「…誰にすんの」
「誰にでもだ、うるさい」
「ごめ」
阿含は雲水を抱えたまま、苦労して兄ごと体を起こした。乱れた髪で、非常に面白くなさそうに不貞腐れている兄と見つめ合う。
「なあ、わがまま言えよ」
「……なんだ?」
「あのカスとはもうしゃべんなとか、あの女とはもう会うなとか、なんかあんだろ」
「……」
兄は面白くなさそうな顔のまま目を逸らした。
「言えるか」
ついさっきは肩が揺れるほどにビビらされた兄の険呑な眼差しが、今や痺れ上がるほどにかわいい。眉間の皺の愛しさときたらない。キスじゃ足りないがまずはキスだ。顔を寄せたら顎を掴んで押し戻された。
「ンだよ!」
「なんなんだ、お前は!」
「だって男心じゃねえか、焼き餅焼かれたら嬉しいじゃんて。なー、言えよ、思ってること言えよお」
「言えない」
ついに、じわじわと眼元から赤くなっていく雲水である。
「…い、言えって」
「…言えない」
「言ったら俺、言う事聞くぜ?もう家に誰もあげんなっつわれたらそうするし、女ん家行くのだってやめろっつーならもう行かねえ」
阿含は握って離さない兄の拳に頬を寄せた。
「なあ、雲水のわがままが聞きたい」
「…哀願するな」
つっこむ兄の声は、かなり弱々しくなっていた。
「なあ」
「……」
「なあ?」
「………」
「なあなあ、なあ」
いけると踏んだ弟は驚異のしつこさで攻める。
わがままなんて、と揺れ始めているらしい兄を抱きしめて鼓動を重ねた。
「…言っても」
「うん」
「いいのか」
思わず抱きしめたまま横を見たが、赤い綺麗な形の耳しか見えない。
「いいよ」
「思うだけでも許されないことだ」
「んなことねえよ」
「ある」
次第に兄の声が熱を帯びて潤み始めた。泣くほどの何かがあったのだろうか。絶対に聞き逃したくない。
「聞かせてくれ、雲水」
兄の腕が阿含の背中にぎゅっと回って、うん、と蚊の鳴くような声がした。
「俺の阿含」
そう言った。
頭が真っ白になって数秒の記憶が飛んだらしく、あとで何度思い返しても、兄の体が熱くて震えていたことしか思い出せなかった。音も色もなく、生まれる前と同じだ。腕の中の兄の体が熱くて震えていたことだけを憶えている。





まさに哀願だった。
「お願い、お願い、もっかいだけ、もっかい」
「ばかやろう」
詰る兄は表情は諦めているのに、華奢な膝を抱え上げようとすると腰を捩って上へ上へ逃げる。
「あああ、雲水、なあ」
ベッドの上で半泣きになりそうなくらいの必死さで追いかけて、待てと制止されるのも「ごめん」としか返せなくて、つくづく自分が情けなくもあるのだがそれどころではない。
「ば、くるな」
壁に縋っている兄の腰にしがみ付く。
「なあ、ここ」
「ば、やめ、」
引き締まって瑞々しい、白い尻たぶを両手で鷲掴んで顔を埋める。舌を突き出して探ると、掠れた声で泣きじゃくり始めた。一晩で100回以上は確実に馬鹿呼ばわりされたと思う。
「そ、そんなとこ、ひ、ひぁ」
「んんんん」
美しい線の足が暴れるのも体の下に封じてしまえば、ひくひくと痙攣するしかなくて、阿含は腕も足も2本では足りないと思った。自分以外のものに空気にさえ触れさせないように包み込んでしまいたいと思った。
「阿含」
この声を聞くために自分には耳がついているし、この人に呼ばれるために自分には名前がついている。
鼻を噛まれたのを思い出して、下半身がぎゅうううううと熱く痛くなった。兄のせいだ、何もかも兄のせいだ、こんなにつらいことはない。歯の感触を思い出すだけで舌の根が震える。薄いさくら色の唇から覗く白いちかりと光る兄の歯。乳歯はどこへやったんだろう、欲しい。実家に帰る機会を作って探さねばならない。それにつけてもこの鼻と下半身の疼きは耐えがたい。
「お、お返しだ」
壁に上半身を押さえつけて耳に舌を捩じ込む。最奥を探る。両手は胸元と削げた腹に張り付いて動く。
「ううぅ、んぁ」
乳首をやわらかく摘まむ。
「あぁ…や、いやだ。んん…、そ、そこ。阿含、指、指、いや、や…」
「だいじょぶ、な、やわらかいな、ううう、くそ、う、う、雲水」
声までガタガタだ。いつになくひどい。理由はもう、あれだ、わかっているからしょうがない。兄のせいだ。
俺の持ち主の、兄のせいだから、仕方がない。
壁とシーツと自分の体でどこにも逃げられないように閉じ込めてから、鼻を噛まれた仕返しも今夜はこれで5度目だ。



 

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