忍者ブログ

2025/01/10 (Fri)
「[PR]」
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



2011/06/16 (Thu)
「●君がほしい」
Comments(0) | ES21:双子


大学生両想いで超ラブラブしている阿雲SSを続きにおいていきます~。
最初考えてたのと全然違う話になったけど幸せならいいよ!ね!
阿含が雲水好きすぎておかしくなってます!(それいつも!)



















______________________




ブーケを渡すと、
「花って」
と言って兄は笑った。
「殺風景な部屋だから」
「殺風景で悪かったな」
ずかずかと6畳のリビングに上がり込む。「畳だし」と溜息が洩れる。
「涼しいぞ」
キッチンで弟の土産を紐解きながら言う、兄の声はまだ笑っている。
「阿含、手を洗え」
「うっす」
ちょこちょこ兄の背後に回って、腰に両腕を回して抱きしめた。
「おい」
小さい花束の水切りを終えて、ガラスのコップに水を張っていた雲水が振り返る。
顔を寄せると、逃げられた。
「なあ」
ふてくされた声でねだってみても、兄はふいっと目線を花に戻してしまって、一本づつ丁寧に生けている。
白と水色が基調の清楚な花だ。
花束というには質素すぎる安物だが、このくらいでなければ確実に兄は引く。
「これ、なんだ」
言いながら兄が骨ばった指で、白い綺麗な皮膚が所々ささくれた上に美しい爪の乗った指先で、薄い青色の花弁を撫でた。
「…勿忘草の一種だろな」
「ふーん、小さくて可愛い花だな」
「…今度から、来る時は花を買ってくることにしょーかな…」
そんなに喜んでくれるならさあ、と、言外に言う。兄が喜んでくれるなら、きっと自分は一国だって奪って捧げる。
「いいよ」
阿含が複雑な気持ちになるほど愛しげに花に触れたくせ、雲水は笑いながら断った。
少し切なそうだった。
「ん?」
「…花は、枯れるじゃないか。処分するのがつらい」
「ウン」
阿含は雲水の首筋に鼻づらを擦り付けた。
「くすぐったいぞ」
やめろとは言わずにもがく兄を抱きしめて、くすぐったいのはオレの胸の中だこのやろうこのぎゅんぎゅんをどうしてくれやがるぎゅんぎゅんがぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんゆってやべえ熱い超熱いずっぐんずっぐん痛いもうくすぐったい通り越して痛いあああんいだああああお兄ちゃんオレ息できないよおおおお助けてダメ死ぬお兄ちゃんお兄ちゃお兄ちゃあんああんあああああ
「ちょ、痛い強い馬鹿おまえ、俺の背骨を折る気かうわああ!!」
腰に巻き付いた腕が雲水の体を持ち上げた。易々と肩の上に担ぎあげられて目が白黒する。
「あ、あごん」
「だ、だめだ。もーだめだ頼む」
「何を、だっ、どこへ行く!?」
「だ、うん、だだ抱かして、お願い抱かして死ぬ」
「おまっ…」
「遠距離なんか無理なんだよそもそもお!!」
悲鳴を上げながらずかずか畳を踏み、足で押入れを開け放つ。そのまま流れるような動きで片足が布団の隙間に突っ込まれるや、親指と人差し指で掴んで引っこ抜く。
弟は片足で布団が敷ける。二十歳を目前にして、雲水は初めてそれを知った。
ぽんと転がされて、色々把握できずに抵抗もしない兄におっかぶさって、阿含は兄の白い額を手のひらで撫で上げた。
溜息をつく。
「…あのな」
「うん」
もう弟に任せる。、兄の返答はどこか呑気だ。
「あのな」
額から後頭部まで撫で回して、そのまま頭蓋を掬って
胸に押し抱いた。兄の呼吸が阿含のシャツを湿らせる。
一度強く抱いてから、そっと布団に横たえ直して、色素が薄めの瞳を覗き込んだ。
「お前の、一番欲しいものは何だ」
雲水は目を見開いた。右手を伸ばして、やっと肩に届き始めたドレッドを一房掴む。引き寄せられれば唇が重なって阿含は目を閉じた。
頭皮が痛い。幸せすぎる。完全に俺はもうMだ。生まれた時から調教されてるんだ。禿げるまで引っこ抜かれたっていい。




眠りに落ちる寸前、最後に雲水が口にしたのは弟の名だった。
「あごん」
と呟くや、ことりとその阿含の胸に落ちた。阿含は腹の底で泣きながら兄を抱きしめて寝た。
ゆめうつつに考えた。
最初に兄を抱くより前、自分はどうやって生きていられたのか、どれだけ思いめぐらしてもわからなかった。

 


___________________________

 

拍手

PR



コメントを投稿する






<< 賊徒の女帝  |  ホーム  |  くりそつ >>