クリスマスとかバレンタインって、なんか、血がたぎる(笑)
めざましTVのイルミネーション特集とか見てても阿雲宮一に変換できる。
もう!バカ!
けっこう前にクリスマス話が思い浮かんでたので、クリスマスになったぞーと思って書いてみました。畳んで置いてあります~。
阿雲阿?ふつうの双子?
とりあえずこの兄弟はほんと仲良いよねという気持ちです。(なんぞ)
拍手ありがとうございます!!!!!
また後ほど、お返事書かせて下さいませ!ありがとうございます…!!!
メリクリ
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レンジの過熱ボタンを押したところで、携帯が鳴った。6畳の真ん中に据えた正方形の座卓上で、銀色の長方形が震えている。雲水はサブディスプレイに明滅している弟の名を見てからフラップを開け、通話ボタンを押した。
「はい」
『よっ』
弟の声は快活だ。背後でざわめく人の声、信号の音、街中のBGM。
『今なにしてんの』
「天ぷらを温めてる」
『はあ。てんぷら』
「何か用か?」
『暇つぶし。お前ぜってーシングルベルだろ思って。まじアタリ超ウケる』
げらげらと陽気に笑う。むかつかなくもないがとにかく腹が減っているので、チンと言ってくれたレンジへいそいそ向かう雲水である。
炊飯器から丼に飯をよそい、天ぷらを乗せ、めんつゆをかけて座卓に戻る。置いといた携帯を取り上げると、
『ゴラ!?雲子!!おいごら!!』
「阿含、うるさいぞ」
『いきなり黙りこんだと思ったらテメ、天ぷら優先しやがっただろ』
「飯の支度してる時にかけてくるからだ」
『ハゲが……!』
「お前は今、何をしてるんだ」
『女待ち』
「お前を待たせる女がいるとは驚いた」
雲水は、今度は携帯を片手に持ったまま、箸を探しに調理台へとって返した。
『待ち合わせまで、まだ10分あんだよー。たまには可愛いとこ見せとくと色々チョロくなんのよ』
「最低男だなあ」
雲水は厭らしく笑う弟に相槌を打ちながら、洗っては使いしている割り箸がまな板の横で乾いているのをゲットする。
「寒くないのか」
『あ゛?』
「10分待ちだろう。風邪ひくなよ。どっか入ってりゃいいのに」
『…バカにすんな、どっかのハゲとは頑丈さが違うつーの』
「馬鹿にしてるんじゃない、心配してるんだ」
阿含は少し黙った。雲水は湯呑みに水道水を注ぐ。
『…心配は、てめえのをしろ…』
「は?」
片手で運んだ箸と湯呑みを天丼に添えて、座布団に腰を下ろした雲水は、ちょっとむっとする。
「自分の、何をだ」
『おまえな。今日は何の日だ、言ってみろ』
やれやれだ。
「クリスマスだろ。あ、クリスマスイブだろ?」
『そうだ。クリスマスっつったらオマエ今じゃカップルイベントデーよ。仏教徒も神教徒も一人寂しく過ごすとかありえねえデーよ。二人の日、愛する人と聖なる一夜を語り合う日だぜ?』
「だから今、お前と語り合ってる」
雲水は言って、湯呑みから水を一口飲んだ。
時計を見る。
夜の7時を指している。
街は、さぞ華やかに賑わっていることだろう。
「昨日の決勝、見に行ったよ」
アメフトの高校大会のことだ。今年のクリスマスボウルは23日祝日。昨日だ。晴れ渡った。
「会わなかったな」
大学のチームメイトたちと行ったので、弟には連絡を入れていなかった。
弟は黙っている。
ねえ、と女性の声が聞こえた。受話器越しにだ。誰と話してるの?と、向こう側で弟を問い詰めている。
「来たのか、相手」
弟はこれからクリスマスのデートなのだ。
そして自分は天丼を食う。
「じゃあ、またな」
と言って、応えを待つ。
『あ゛ー』
…返事とも欠伸ともつかぬ声が返ってきた。
「…あ゛ーじゃないだろ」
前々から注意しようしようと思っていたことを言ってみる。すると、
『メリクリ』
思わぬ訂正が返ってきた。そうじゃないんだが。
「まあいいか」
苦笑する。
「ええと。メリークリスマス。じゃあな」
ん、と相手が頷く気配がした。そっと通話が切れるのを待つ。
少し冷めて食べやすくなった天丼をむしゃむしゃ食べながら、雲水は思った。クリスマスに阿含と話ができてよかった。プレゼントをもらったような心地で眠りにつける。
空きっ腹にまかせて三分の一までを一気食いし、溜息をついた。
「うまい」
けっこう満ち足りた生活をしているのだった。
「ねェ、いま、誰と話してたの?」
斜め下から上目遣いで、不安なのよを見せつける。
付き合ってるわけでもなし、他の女と話したくらいで浮気だの何だの言うつもりはないが、今日はとっておき、クリスマスイブなのだ。
せっかく楽しみにしていたデートなのに、一夜くらい恋人気分に浸り合っちゃおうと期待していたのに、他の相手の影などちらつかされては興醒めではないか。
阿含は笑った。可愛く唇を噛んでみせる彼女の肩に手を回し、
「電話の相手、兄貴だよ」
と答えて抱き寄せた。
「おにいさん!?」
びっくりした彼女は、
「あ、聞いたことある、そういえば。双子なんだよね」
意外な答えに、一転して興味津津だ。
「やっぱ似てるの?ね、お兄さんってどんな人?」
阿含は見つめていた携帯を閉じてポケットに滑り落とし、抱いた肩を促して歩き出した。
精悍な顔立ちには、もういつもの甘い笑みが乗っている。
「俺より口説き上手」
彼女はすっかり機嫌を直して笑い飛ばした。
「絶対ウソだあ!」
これが平和だ。性なる一夜が今幕を開ける。
天丼食いたい、と阿含は思った。
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終