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2011/01/04 (Tue)
「ラブアンドゲーム」
Comments(0) | ES21:双子


es043.gif


酔っ払って更新したので起きてからちょこちょこだけ直しました;;;
正月、飲みすぎだなー肝臓によくない、と思いながら飲み続けてしまう。おいしいよ、ビールがおいしいよ。
焼酎がおいしいよ。飲んじゃうなあ。
続きにビリヤードやってる金剛兄弟話です。正月に田舎でビリヤードしたので、雲水にもさせてみたくなった。絶対うまいよ~。でも詳しくないのでゲームのことは適当に書いております(笑汗)
阿→雲←○です。
○の人は最初オリジナルキャラで考えてたんですが、ふとこの人をあてはめてみたら妄想ががんがん膨らんでしまいました。
恋ヶ浜かわいいですよね~泥門の試合見に来てくれてるし大学でもやってるし、なんかかわいい!
パワフル語ができる人が一人だけいるっていうのがなんともいえないw










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最近彼女とうまくいってない。
ケンカ中っていうわけじゃなく、なんか擦れ違う。避けられてるのかもしんない。
誘っても女友達だの家族だのと先約があるとか何とか。マジで?なんつって問い詰めるのも、切羽詰まっててカッコ悪いし、なんでこうなっちまうかなあ。クリスマスだってお泊りナシだった。サヨナラは大体このパターンだ。
おしゃれでかわいくてわがままで甘えんぼで、オレのお弁当作るのが大好きな彼女。
オレは別れたくなんかないんだけどなあ。
そんなこんなでしょぼくれがちなオレ、これでもチームじゃキャプテンだ。正月明け、心配した部活仲間が、盛り上げようとゲーセンに連れてきてくれた。部活じゃ、弱かないハズ、けど中々イイ線までいけないオレら。だけどみんなイイヤツだ、まじで。仲間っていいよなマジで。
大型ビルの1から3階までがゲーセン、ボーリング場が4階でビリヤードとダーツが5階。6階にカラオケとミニシアター。
地味にメダルで遊ぶなんて、この人数でやってらんねえから、腕慣らしに音感ゲー脳トレゲーガンシューティングを一通りこなして熱くなったところで5階になだれ込む。
財布と相談して、男ばっか体育会系ぎっしり、今夜はガチでビリヤードだ。
「藍木テメ、携帯見てんじゃねーよ!」
「彼女かよ!」
「ちょ、これだけ!これだけ送らしてって!やべーんだって!」
携帯片手に逃げる奴をキューの柄で小突きまわすと、隣の台のカップルに睨まれた。うるせテメいざって時に頼りになるのは女じゃねえぞ友達を大事にしない奴は滅びろ。
でも、体育会系のわりに小心・・・じゃなくて紳士なタイプのオレらなので、とりあえず騒ぐのはヤメにする。
静かにすると、隣の台のバカップルのどうでもよすぎる会話がよく聞こえて何とも言えない。
「ねえ、やだあ、こう?これでいいの?」
「もっとこう、よく見て」
「やー、見えない~」
「オレじゃなくて前見ろって」
「やだあー、どこ触ってるのお」
「えーいいじゃん」
うぜえ・・・公開イチャ全肯定派なオレが言うのもなんだけど、今のタイミングでやられるとまじでうぜえ・・・
「えー、いいじゃあん」
「変なところを触るな」
「教えてるんじゃん」
「そうなのか」
「そうだって。ホラ指開いて」
「あ、あまり、からみつくなよ」
「形教えてるだけじゃんて。人差し指、中指、こう」
「ん、ん」

バカップルの向こうにある台で、神奈川の金剛兄弟がイチャついている。オレは飲んでいたジンジャーエールを吹いた。


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「どした、初條」
高速で半回転したかと思いきや、口からは炭酸を垂れ流しつつ顔色が真っ白な主将に、台を囲む恋ヶ浜の面々はびっくりである。
「バカッ、しっ、アレ見ろ」
袖を引くチームメイトに、初條は背後の台を指差す。バカップル越しに、全員が確かにそれを見たらしい。二、三人が初條の腰にしがみついてきた。
「なに、なんでいんの・・・」
「まじで?リアル金剛兄弟?」
「あれはまちがいねえだろ」
「本人?」
「あのアタマは間違いねえだろ」
「え、金剛兄弟って新龍寺?ナーガ?」
「だろ」
「なに、なんでいんの」
「つか仲良過ぎじゃね?」
「なんでいんの・・・」
全員で頭を寄せ合ってぶるぶるした。ちょっと極端だけどわかりやすく例えると、毎回県予選落ちの高校球児が、街中でマーくんと斎藤くんが遊んでるのを目撃したみたいな衝撃と思っていただければ違いない。
「へったくそ♪」
上機嫌に歌いながら、金剛阿含が背後から羽交い絞めた金剛雲水の坊主頭を、片手でじょりじょりしている。
雲水は難しい顔で反論一つせず、弟を背中にはりつかせたまま台の上を睨むばかりだ。
「お前の番だろう」
「んー」
阿含は兄の体を突き飛ばし、台に歩み寄る。
「お手本見とけよ」
「ああ」
ケンカを売るような阿含の言い方に、初條たちの方がカチンとくるのだが、雲水は真面目に頷いた。
阿含は偏光っぽい青レンズのサングラスをしており、視線の動きはわからない。
無造作に構えた。と思いきや、すいとキューを引いて腰を落とした瞬間、絵のようだった。
洗練、電光のワンショット。球の位置やら動きやら、初條たち面々からは見えなかったが、金剛兄弟と恋ヶ浜の間にある台のカップルが口を開けて驚愕しているところからして、尋常のプレイではなかったんだろう。よい音が数秒と開けず、いくつも響いた。
金剛雲水が溜息をついた。
「見事だ」
「当然」
兄は、じろりと弟を睨んだ。あ、拗ねている、と初條は思った。
「だが、まるで手本にはならん」
金剛阿含は笑って、兄の耳元で囁いた。囁くような素振りのわりに音量は普通で、初條らの耳にもかろうじて届く。
「レベルが違いすぎて?」
ひどい奴だ。噂通りだ。
「そうだな」
この兄貴は、おかしい。
金剛雲水は、澄んだ眼で弟を見ていた。


________________


そろそろ台の時間もおしてきたので、初條らは次の店に移ることにした。別店舗のカラオケ行って、しこたま騒いでから始発まで朝マックの予定だ。男子会最高じゃねえかと初條は思う。
金剛兄弟の台を通り過ぎざま、初條は雲水の横顔を盗み見た。清廉という言葉を人にしたらこうなるんじゃないかという立ち姿だ。ブルーのジーンズに黒のタートルネック、長身の坊主頭が澄んだ三白眼で台の上の球を睨んでいる。
阿含はいない。ちょっと前に、隣の台のカップルの女の方が、トイレか何かで台を離れた。
少ししてから阿含も、兄の肩を叩いて、台を離れた。阿含が女へちょくちょく視線を流しているのを初條は目撃していたのだ、女の方の満更でもない様子も。アメフトでも何でも、離れて見ていると魂胆がよくわかる。
今頃アドレスの交換、で済んでりゃいいけどなあ。新年から兄貴連れでよくやるぜ、と感心すらしてしまう。
雲水は、構えた。腰を落として肘を引く。手本にならぬと言いながら、交互に打つ弟をじっと観察していたのだろう、阿含と違わず絵のような姿である。
が、すぐに姿勢をといて背を伸ばす。台の上を見て、首を傾げている。
キューを台の正面に翳す。次いで、左へ斜に翳す。ショット、ヒット、ポケットの角度を真面目に測っているのである。
通り過ぎてから初條は、踵を返して戻った。なんだか捨てておけないものがあった。
「おい、あそこに打ちなよ」
雲水の隣に来て、台の縁の一点を指す。
雲水は目を見開いて初條を見た。
初條は、ととと、と駆けて、台の反対側に回った。目標点を、こつこつと人差し指で叩く。
「ココ。ココに打ちな」
そしたら、こー跳ね返ってコレにカスッて、コレな。コレのはじっこにカスらせんのな。強めにな。そしたギャッと左行って5番に当たっから。カキーン、でポケット。な。
「ああ・・・」
雲水は、見開いた眼のまま頷いた。
「なるほど」
「やってみそ」
「ああ」
すいと構える仕草には、もう人を見惚れさせるものがあった。
打ってみろと言いはしたものの、対岸の縁に狙い違わず当てるには、それなりの技量がいる。
雲水の打つ瞬間の気迫の目は綺麗なものだった。真面目なのも硬派なのも笑い飛ばしたいスタイルの初條だが、さっきから、あんまり綺麗で笑えないし、放っておけない気持ちになるのだった。
指示通りの強めの球は、初條が示した通りの軌道を走り、ポケットへ滑り込んだ。
「できた」
と雲水が、茫然と言った。
「すげ。うまいね」
褒めると、雲水は首を横に振った。
「ありがとう。や、言われた通り打っただけで」
「言われた通り打てねーよ、なかなか」
「いや、恥ずかしいよ。初めてなんだ」
初めて。
「えっと」
なぜだかもじもじした。違うだろ。ええと。そうだ。
「ビリヤード、初めて?」
「ああ」
うそだろーーー。
ちょっと初條は気が遠くなった。
「あのね、」
何とか声を出す。
「かなりうまいよ」
「世辞はいい」
時代劇のような事を言う。そして、お世辞ではないのに。
兄弟でいるところを見ても、一人の時に話しかけても、この坊主頭はなんだかものすごくもどかしい。
「あんたー・・・」
言いかけた初條を、雲水が見た。途端、何を言ってもいけない気がした。
「何でもない」
この坊主の眼差しは刃物だ。
「そうか」
と雲水は軽く笑ってキューを台に置き、
「恋ヶ浜キューピッドの、初條主将だよな」
初條は心の中で悲鳴を上げた。なんで知ってんのおおお知らなくていいよおおおーーー!!!
「俺もアメフトをやっているので存じている。ありがとう」
初條はなんでか土下座したくなった。
「や、別に、全然。てか、オレも知ってるし。てか、そっちのが全然有名じゃん・・・」
「阿含がな」
「や、あんたもね」
雲水の明らかに社交用の笑顔に、やや影が下りた。初條は慌てる。
「あんた・・・金剛、・・・雲水さん、あんたさ」
「うん?」
「ちょっと、自覚しな」
なにを。
雲水は初條と目を合わせて首を傾げた。
禁欲的なのが痛ましいほどの佇まい。その立ち位置を考えれば、白すぎるくらいの肌に、彫りの深い目鼻立ちが顔に落とす淡い影。視線は刃物だ。立ち向かう物の心臓を、容易に切り裂く。
初條は、なんとか言ってやった。
「ビリヤード、うまいよ」
雲水は少し考えて、
「ありがとう」
と言った。
阿含は何をやってんだ、と初條は思った。女としけこんでいる双子の弟のほう。なにやってやがんだ。
こいつを、一人にしておいたら、なんだかよくわかんねえけど、いけないんじゃねえのかちきしょう。


________________
 


年始の休暇で若者が賑わうホールの中、一人きりの仏頂面でこつこつ練習していた雲水は、突如後ろから首を閂締めにされて潰れた悲鳴を上げた。
「ぐわ・・・阿含!」
「ただいま」
「遅いぞ!げほ」
開放されて、咳き込む雲水である。
「ちょっとね」
「腹の具合でも悪いのか?」
「んーん」
「・・・・・・」
兄の目はお見通しだ。また一人この世に、この弟に騙され嵌められ泣かされる、愚かで気の毒な女性が増えたのであろう。溜息も出ない。
「まあいいが、時間ってどうなんだ。この台何時までだっけ」
「あと15分だな。ナインボール一回しよ」
「わかった」
受付でもらったクーポン券の裏に、あみだくじを作って二人で引く。じゃんけんをするとほとんど弟が勝つからである。バンギングも初心者である兄に不利なのでパスだ。めんどくさいが、二人でくじを作って二人で引くという、異様な仲良しっぽさが、なんかちょっとこれもいいんじゃないかというか、気に入っているおかしな双子である。
「雲子が先攻」
「うん」
静かに張り切る兄の姿を見守る弟の視線は、常になく優しい。
しかし、兄の一打を見るや、その視線は一転して険しくなった。
「オレのいねえ間に誰かとやった?」
「あ?別に」
雲水はきょとんとして、片手でチョークをもてあそんでいる。
「おい、見りゃわかんだよ。ホモのナンパにでもあったのかっつって心配してやってんだよ」
「馬鹿なことを」
歯軋りしそうな風情の阿含に、雲水は今度こそしっかりと溜息をついた。
「気色悪い事言うな。他校のアメフト部の主将があっちの台にいて、おまえのいない時に帰っていったけど、その時にちょっと話したよ。アドバイスもらった」
「なんて」
「ここに打てばいいと、一度教えてもらった」
ドカスめが。
阿含は盛大に舌打ちする。
「それ、やめろ」
と律儀に雲水は咎めだてる。雲水は舌打ちが嫌いである。
「おまえ、隙ありすぎんだよ」
「意味がわからん」
苦々しげな阿含に、雲水はにべもない。
「お前の番だ」
三白眼で、じろりと促す。
阿含は荒く鼻息を吹きだして、兄の腰に片手を回して引き寄せた。
「おっ、おい」
「ハンデ雲子。すっげ打ちにくー」
「なら離せよ」
弟の体とキューの間に閉じ込められたかっこうで項垂れる。
阿含は目を閉じて兄の胸へ鼻を揉み込んだ。さっき便所の前でアドレスと首筋をもらった女が目を丸くしてこちらを見ている。


________________


カラオケに入ろうとしたところで、携帯が鳴った。聞きなれたメロディ。思わずその場で二つ折りの機体を開け、受信のフォルダを開く。彼女からだ。

[こないだは一緒に行けなくてごめんね(ノω;)今おばぁちゃんち!元気だょぉ かおるんげんき?]

初條は膝から崩れかけた。

「元気じゃねえよおおお」
「何叫んでんの」
「行くぞオラア」
「行ったるぁアア!」

若者の咆哮が眠らぬ街の片隅で響く。毎夜のことだ。
新年開けたばかり。道も空も黒いこの街でも、冬の空気は冷たく澄んでいるような気がする。深夜二時、恋をする者だけが目を覚ましている。歓喜に悲嘆にあけくれるやらで眠ることを知らない。何をもってしても断ち切れぬ未練を尾のように引いて彷徨っている。
新年開けたばかり。
冷たく澄んだ、冬の空気のような人を知っている。
メールの返事は、家へ帰ってからしてやるつもりだ。初詣は一緒に行こうね。
われ知らず、初條は携帯に頬擦りをしていた。
 

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