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2010/11/08 (Mon)
「金剛弟ツンデレ脱却企画」
Comments(0) | ES21:双子


ヒル魔と阿含の関係についてもんもん考えてたら浮かんできた、最京大学仲良し話を続きに置きます。
かなり意味不明な乱文で、最京の人ばっかり出てくる話(というか会話文?)なのに、私は本当に雲水が好きだな・・・と書きながら思った文章です。
最京の人たちは、ホントは一匹狼多しって感じなので、飲み会とか成立しない気がするんですけど!















**************************









最京大学敷地周辺には学生ターゲットの安居酒屋が多数ある。それらの店舗とは色んな意味で一線を画した、おやじさん向けな赤暖簾の下に、各人は集うていた。
「なんでこんな店でカスと親睦深めねえといけねんだよ」
愚痴っているのは阿含で、その横でキリリと彼を見上げたのが一休だ。
「いやでも阿含さん、この店3人以上でこないとモツ鍋出してくれねんスよ!」
「知るかよ!」
「今日はなあ」
けけけ、と喉を痙攣させる笑い方で阿含の神経を逆から撫でるのは、泥門の悪魔司令塔ことヒル魔妖一。
「我らがエースこと金剛あごん君の、ツンデレ脱却企画飲み会っつーことで」
「誰が何だって、あ゛ー!!?意味わかんねーホザキ垂らしてんじゃねえよ」
阿含の隣の一休の隣にいる番場が、静かに目をつむった。
そのまた隣にいる赤羽も、静かに目をつむった。
無言で、知らぬは己ばかりなりとは愚かなりなあと、そんな念波を出していた。
「何だてめえら……」
「とりあえず、おう、糞ドレッド、おいこっち向けって」
ヒル魔が拳を逆さにして、中指の骨で机をこつこつ叩いて呼んでいる。
「んだよ」
「オレのこと好きだろ」
阿含は押入れを開けたら蛸がいた顔で沈黙した。
「だめっすようヒル魔。いきなしヒル魔はハードル高過ぎっすよ。純粋にツンデレという観点のみから見れば、あんたは雲水さんを超えかねないんスよ」
「まじで。それはひくわ…ゴメン…」
「謝んなよ!謝ったら阿含さんの立つ瀬ないじゃないっすか!」
「おい、待てよ、なんかわかんねーけど、馬鹿にしてんだろオイ潰」
「じゃあコイツからいこう一休」
ふへっ。
一休は、カウンターの卓越しに阿含向こうから伸びてきたヒル魔の長い両手に頬を掴まれ、無理矢理阿含を見上げる形に顔を持っていかれる。変な声が出た。
「一休は好きだろ?オイ100年に一度の天才さんよお」
天才仲間だもんなああ?
「あ゛?」
腹が立つばかりの挑発笑顔に、額に血管が浮き出かけるものの、
「阿含さあん」
一休が他意のない、子犬ばりのびっくり面白顔を至近距離でくりひろげているので、叩き捩じ伏せるのには躊躇が入る。
「……まあ、一休は使えるだろうがよ……」
一休の顔が輝いた。
「わあ…!」
喜んで、また「はいここはクリア」とヒル魔から解放されたのを幸い、いそいそと割り箸を割り始める。その向こうでは、番場と赤羽が猪口に日本酒で乾杯をしている。チン、と涼やかに響く陶器衝突の音がものすごく耳障りだ。
「一休の次のハードルっつったらアレか」
とヒル魔が携帯を取り出して操作し始めるのに、
「おい」
と手を出そうとした阿含を、番場が後ろから羽交い絞める。
「あ゛!?何すんだっ…!」
番場は無視だ。
常日頃から、高校時代の世界戦時分から、ちょっとどうにかならんもんかコイツの性格はと思っていたのだ。
同じ大学に来られて、正直「あーあ」と思った。「あーあ」の予想は当たって、なんていうか、色々あった。
そんな阿含の色々を見てきて、番場は察し当たったのだ。
将を射んとすればまず馬を射よと云う。阿含の馬は彼の双生の兄である。
「おい! お゛い ! やめろ、おいいいい!!!」
阿含の口に、赤羽が涼しい顔で、憂いの青味すら帯びた堕天使の表情で、おしぼりを二本詰め込んだ。
一休がそれに気がついて、はっとして、阿含を見上げて問う。
「だ、大丈夫すか、阿含さん!?」
うぐぐぐぐ!唸り上げる阿含を見上げながら、一休は真剣に鍋からモツを掬っては自分の取り皿へ移し、「うまいっすよ!」と報告しながらもりもり間断なく食っている。
今日は若いヒトが多いなー、カウンター二人空いてるー?と言いながら背広のサラリーマンが暖簾をくぐってやってくる。あいよォ、奥いいっすか、と店の親父がこたえてこだまする。
ヒル魔が発信した携帯には、応答があったらしい。
「よ、お久しぶり」
ニヤけた悪魔面のヒル魔である。
「ん?んん。おう、ああ、阿含な。元気っすよー有り余ってるね。一休も、今スゲー食ってる。ちょっと代わるぜ」
言うなり、ヒル魔は携帯を投げた。赤羽が受け止めて阿含の柄シャツの襟元へ差し込む。どちきしょう。

『よう、阿含かあ。元気なんだってなあ。』


 や ま ぶ し 


阿含は顎を撥ね上げて携帯を弾き飛ばした。シルバーメタルは木張りの床を跳ね、壁にぶつかって行き止まる。
「あれ、今の声、山伏せんぽあい!?」
豆腐とモヤシで頬袋を一杯にした一休が、携帯が飛んでった方向を振り仰ぐ。
「ヒル魔、ダメっすよ山伏先輩はクリア済みっすよ。先輩の卒業式の時、阿含さん、まあアンタとやれてオレも楽しかった的な事ボソっと言って先輩泣かし」
「しゃべんなテメエはもおおおおおおお!!!」
爆発的な感情が爆発的な力を生み、阿含は番場の拘束を跳ね飛ばして二本のおしぼりを吹き散らし、一休の首に両手でくらいついた。絞殺したい。
「やめろ、窒息するぞ」
関節と筋肉と人体の壺、この三点の熟知を踏まえながらの番場のスローな拘束技が光を放つ。
的確にゆるやかに急所のみを捉え動くを封じる番場、冷静さを失って羽交い絞めにされるがままの阿含、二人の背景にコブラに絞め殺されるマングースの絵がまたたいては消えた。
「おでん頼むわ」
と品書きを広げるヒル魔。
「あ、オレ大根と玉子は絶対いる」
と箸でその品書きを差す一休。さっきまで阿含に首を決められて青い顔をしていた筈なのだが回復が大変早い。
「大根は俺も。あと蒟蒻と牛筋と」
「ガンモと餅巾着と牛蒡天と丸天とあればじゃが芋」
ちゃくちゃくと注文に乗っかる赤羽番場に、
「あい了解」
言ってヒル魔はぎらり眼光を光らせた。その目で店内を一瞥すれば、なぜか店員が一人は青い顔して注文を取りに来てくれるので不思議と便利だ。
「おい、てめ…」
激昂する阿含にもヒル魔は視線を流す。
「糞坊主には連絡する気ねえよ」
両腕を漆黒パーカーのポケットに突っ込み、品書きに再び目を落としながら口の端で笑う。
「テメーから連絡しねえと意味ねえだろ」
阿含の額に青筋が浮いた。
「おい……」
ドスのききまくった呼び声に、ヒル魔は臆せず顔を向けた。
阿含の吐いた痰が、察して避けたヒル魔の右頬を掠めた。
ウィザーズ面々の陣取り席に、ちょっとした沈黙が落ちた。
ヒル魔は、パーカーのポケットに入れていた右手を出す。除菌ウェットティッシュが握られている。そっと、一枚引き出して、頬を掠めたんだかどうなんだか、人間の動体視力では計り知れなかった軌跡の痕を、拭く。
次いで、漆黒地のパーカーの腹ポケットから、左手も出てくる。
こちらは第二の携帯電話を握っている。
ヒル魔は光の速さでダイヤル操作をした。
「よお糞坊主」
「テテテテンメエエエエエエエエエ!!!」
「落ち着け、声全部向こうに漏れてるぞ」
自分の上半身を拘束する番場に窘められればぐうの音も出ない阿含だ。
やっぱり将の馬はあの坊主の兄ちゃんだなと、番場は心の中で再確認。
「ん?阿含?手に負えねっつの、あーん?投げんじゃねえよ甘やかしやがって。あん?ケケケ、そりゃいいや!ん?あー?ああ、あの店。お気に召したなら何より。あー今週は無理、来週でどうよ」
「何の約束できそうになってんだアアアこらあああアアアアア!!あああおおおおお!??」
「落ち着けって、ほら」
番場が顎で示した先で、赤羽がまたおしぼりを円筒形に丸めて口に詰め込みやすい形に整えているのを見てしまい、阿含は血涙を絞りつつ口を閉ざす。
「んでよー。そうそう、何の用かっていうとな。キミの弟さんがだね。うん。お兄さんへの日頃の気持ちを伝えたいと言うんでね。まあ、今仲間内で飲み会っぽくなってるわけなんだけど、そードレッドドレッド。糞ドレッド。アフロかドレッドかハッキリしろっつードレッド。頭ウンコ。そうそう」
殺す。
瞳の奥に殺気が滾ったところで、
「ほれ」
と細長い指から携帯が差しだされる。
顔を背ければ、また赤羽がお節介にも、柄シャツの襟に突き刺してくる。全員ぶっころしてやろうか。

『阿含?』

あーー。

あ゛ーーーーーーーー。

雲水の声だ。


『阿含か』

喉元まで怒りの塊が競り上がって、今にも炎を吹くはずだったのに、雲水の声だ。

『何だ、日頃の気持ちって』

「………」

無言を通す。話す事などないし、口も喉も開かない。
外に出さないから胸の内に満ちてしょうがないのだ。
そうだ。
出せるものなら出したほうがいい。カスどもの言ってることは間違ってない。冷たくするも甘くするも所詮は打算だ。手段を講じるのは目的があるからだ。距離にして一番近いのは直線なのだ。告げればいいのだ。
声にすればいいのだ。
ただ、思うままに走ればいいのだ。

『阿含』

携帯はスピーカーがオンになっていた。漏れまくっていた。阿含は口を開きかけた。開きかけて震えた。

『言わなくていい』

阿含の目も、周囲の目も、ぱかっと丸く見開かれた。

『わかってるから』

雲水の声は静かであった。じゃあ、またな。などと、平然と通話の終了を切りだしてくる。
『阿含、返事は』
「……あ゛ー」
『ああ。また。』
ぶつ、と通信の切り落とされる音が、無情なまでに、阿含の半径3m以内に響き渡った。
番場が店名の入った徳利を持ち上げ、阿含の前にあるガラスのコップになみなみと注ぐ。「飲もう」
ヒル魔はウーロン茶の入ったジョッキの柄を弄んだ。一休が店員を呼びとめて梅酒を注文する

。すぐさま、さきほど頼んだおでんと一緒に、もりもり食事が運ばれてくる。
「うん、飲もう」
「飲もう」
阿含は黙って温いコップ酒を煽った。
こうして最京親睦会が乾杯もなく始まったと同時に、金剛あごん君ツンデレ脱却企画飲み会は

閉幕した。
そして今宵は一同、わりと無言の、静かで行儀のよい若者の客となり果てたのであった。

 



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