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2025/01/09 (Thu)
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2013/02/09 (Sat)
「魚恋」
Comments(0) | ES21:双子
滝行の時って、新龍寺の生徒は褌になってましたよね。
以前、高野山に登った時、滝行体験もありますというのをHPで見つけて、やりたかったけど時期が合わずできなかったのですが、そのHPによると滝行の時には白い着物?を一枚着てやるみたいだったんですね。
褌の上に一枚だけ白い衣を着て、雲水が水にぬれてたら、ぼくは…ぼくは…。
そんな妄想をいつもしてます!

1月のインテで配布した、そんな妄想がやや発酵している小説を続きに置いております。
一雲ぽいです~。一雲好き…!











魚恋



男同士でこんなことを言うのもなんだけれど、阿含さんは色っぽい。男の色気がある。これが男の色気というものなんだろうな、というものが、むんむんしている。
バタくさい、といおうか。肉体的にも性神的にも露出が多いと言ってしまおうか。
お相手の女の子が、それも遊びなれてる的なギャル入ってるお姉さんぽい人が、ぱたぱたと日替わり週替わりでいいようにされているのを見るともなしに見ると、うええ…ともちきしょうとも思うんだけど。
わかります…。と思う自分もいるです。
オレが女でも、こますつもりでこられたらコロッといっちまうんじゃないだろうか。

その点が、双子でも違う。

傍らに立つ雲水さんを見上げた。

性の匂いのしない、清らかな感じの人だ。本当に。
猛々しかったり、男らしかったりする一面も、もちろんちょくちょく目の当たりにして氷点下の気温を味わわされてはいるのだけれど、時には額一面に血管の網目がボッコ浮き出た雲水さんに「足休めンなああああ」とマジギレで怒鳴られて全身の皮一枚はげそうにビビったこともなくはないけど、なんというかそういう所も足して引いて掛けて割って、総合的なイメージが非常に無臭めいた人だ。

「なんだ」
「なんもないっす」

見下ろされて、首を傾げながら尋ねられて、笑ってごまかした。
じろじろ見ていたオレを、ふうん、と不審そうに見つめてから、雲水さんは手元のA4の束に目を戻す。プレーブックのダイアグラムにシャーペンで何事かメモを書きつけてから、ページを戻してクリアファイルにしまって鞄に入れてロッカーへ落とした。

「俺の顔に、何かついているか」
「いえ、違うっすよ。雲水さんて血管、青いなーと思って…や、すんません」
「べつに」

薄い唇で言う横顔を見ながら、表情のせいかなあと思った。
阿含さんはちょくちょく、エロいというかいやらしいというか汚らわしいというかそういう、肉食獣的な顔のゆがめ方をする。
ひるがえって、雲水さんは、爬虫類のようだ。
双子でも違うもんだなあ、かなり。
胸の内で勝手に結論を出し、オレは制服の内ポケットからのど飴を出して剥いて食べた。

 


滝壺に映写機を回収しに行くと、雲水さんが淵に腰かけていた。
「ぅんすいさーん」
何してんすか、と駆け寄る。基本的に雲水さんは、わかんないところもあるけど、まじめだし真摯だし一途なのでオレはとても好いている。オレの中で好くというのは、つまり信頼とイコールだ。たとえば雲水さんなら、プレー中にどんなミスをしても、ありえないけれども、もししても、オレは恨まない。
昔は、そうじゃなかったけれども。


それはともかく、ちょっといつもと違う雲水さんだった。

「一休」
と、笑顔で、振り返りながら呼ぶ声までも笑っていた。
やれと言われた時に言われた人しかやらないような滝行を、この人はちょくちょく一人で実施してしまっている。今もついさっきまで、打たれていたのだろう、ずぶぬれが半乾きになった様子の水滴を顔に腕に滴らせて、白衣を肩にかけた褌姿だ。
「風邪ひいちゃいますよ」
「うん」
と、嬉しげな顔を水面に戻す。声を掛ける前から、熱心に見詰めていた。
滝壺の淵の岩に腰かけて、浮かせた白い足の先が水面にひたっている。
その足指の先を、稚魚がぱくぱくと食んでいた。
「わ」
と思わず声が出る。
「鯉?すか?」
「監督が放したのかな。前はいなかったよな」
黒光りする淡水魚の、手のひらほどの大きさの稚魚だ。
「かわいいな」
と、雲水さん。
かわいいちゃ、かわいいけど。
ふふふ、と笑って、雲水さんが足を引いた。ぱくぱくと口を開閉しながら、魚の子供が追いかける。群青色や、白に斑のある背腹が踊り、雲水さんはますます微笑ましそうに眉を下げた。非常に非常に珍しい表情だ。
「かわいいなー」
とまた、雲水さんが言うので、

 


あんたのほうが、

 


というのを飲み込んだ。

消化不良を起こしそうな感触がする。

オレよかだいぶん上背のある体がまた傾いて、足の先を水面に浸す。
腹を空かせているのだろうか、群青に斑が吸い付きにくる。
「くすぐったいな」
と言って雲水さんが笑い、なんだか非常にいたたまれない。

風邪をひきますよ。

もう一度、さっきより少し強い口調で言ったら、そうだなあと名残惜しそうに雲水さんは足を仕舞った。膝を抱えて、水中を見ている。
何だか怖い。

男同士でこんなことを言うのもなんだけれど。

この人は、怖いな。

 





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