「必殺スワントルネード①」
及岩小説アンソロ『食べきれたならぼくはきみに話しかけたかった』に寄稿させていただきました。
楽しみです…読むのが楽しみすぎます…ありがとうございました!
そしてイベント参加情報なのですが、5/3のスパコミに、忍たまで参加しております。
東4ホールの『か2a』におります~。本は忍たまのみですが、間に合えば及岩ペーパーをアニメ記念にでも作れたら…いいな…どうかな…!という感じです。
続きは岩ちゃん女体化の及岩、過去話編みたいなかんじです。
長くなりそうなので、分割してあげます。
及岩小説アンソロ『食べきれたならぼくはきみに話しかけたかった』に寄稿させていただきました。
楽しみです…読むのが楽しみすぎます…ありがとうございました!
そしてイベント参加情報なのですが、5/3のスパコミに、忍たまで参加しております。
東4ホールの『か2a』におります~。本は忍たまのみですが、間に合えば及岩ペーパーをアニメ記念にでも作れたら…いいな…どうかな…!という感じです。
続きは岩ちゃん女体化の及岩、過去話編みたいなかんじです。
長くなりそうなので、分割してあげます。
必殺スワントルネード①
小学生最後の地区大会で、二回戦、俺らのクラブはウシワカ率いる優勝候補チームに惜敗を喫した。
仲間やコーチに挨拶をし、閉会式にも出て、皆と別れて帰る道すがら、岩ちゃんが号泣をおっぱじめた。
明日からもう同じコートには立てないのだ。そんな事をとうとうと搾り出すように語りながら、岩ちゃんの涙は止まることなく、俺の心臓は張り裂けそうに痛んだのだった。
「バレーができなくなるわけじゃないんだから、これからも一緒に練習をしようよ、家とか公園とかで一緒にさ、それで俺すぐにレギュラー取って試合に出るから、それで俺がウシワカに勝ったら、岩ちゃんも俺と一緒に勝ったってことになるじゃない」
とかそんな理屈を言い聞かせようと頑張ったのだが、うまくいかなかった。岩ちゃんは服がびしょびしょになるまで泣き続け、俺はいっしょうけんめい宥め続けた。
明日からはもう岩ちゃんにトスを上げられない。
明日からはもうあのコートの中での溶け合うような交じり合うような時間から、岩ちゃんがいなくなる。
岩ちゃんはなんとしても、その現実が受け入れ難いようだった。
ひんひんと岩ちゃんがしゃくりあげるたび、息ができなくなったような心地になりながら、手を引いた。藍色の空には星が瞬き始めていた。
重大な相談があるんだ、と親の目を盗んでこそこそ電話をかけ、家に呼び出した岩ちゃんは、据わった目をしていた。
重大な相談があるんだ、と親の目を盗んでこそこそ電話をかけ、家に呼び出した岩ちゃんは、据わった目をしていた。
「来てやったぞオラなんだっつーんだ」
ずかずかと俺の部屋にあがりこんで、親に見つかったら雷を落とされるもとなのだが、敷きっ放しの布団に腰を下ろし、危ないくらいの睨みつけかたで問いただす。
「まあ、お茶でも飲んで」とか、ご機嫌を宥めてから切り出した。
「付き合ってって言われたんだけどさあ」
何度か話したことがあるくらいの、隣のクラスの女の子にだ。
中学にあがる前から俺は、困ったことに濡れ手に粟状態が常のモテモテがイケイケでしたけれども、マジメな告白をされたのはこれが初めてのことだ。
「おお」
と岩ちゃんは仰け反った。俺は気分がよくなる。
「それで、付き合ってもいいけどよく知らない子だしな~どうしよーって思って」
「相談ってそれかよお前ほんとめんどくせえな」
布団に横から倒れつつ、岩ちゃんが俺を罵る。ひどいな。
「かわいいの?」
相手の女子は岩ちゃんも知らない子のようだった。
「かわいいよ」
「じゃあ付き合えば」
「そんな投げやりな」
「だって俺関係ねえじゃんめんどくせえっつってんだろグズ川。お前ほんとシャッと決めてバッとやってビタッと終わらせられねえ訳?なんで?クズなの?クソなの?」
「ひどいよ!ほんとにひどいよ!!」
憤慨する俺を、岩ちゃんはだるそうな目で見ている。今日の岩ちゃんは、なんだか殊更に機嫌が悪いというか、俺に構うのが億劫そうだ。焼き餅かなあとも思うけど、ちょっと違うようだ。
「岩ちゃん、なんか具合悪かったりする?」
横になった岩ちゃんの顔を覗きこむと、むっつりと頷かれた。
「え、そりゃごめん。風邪?夏風邪は馬鹿がひくっていうもんね、それともまた生卵食べ過ぎておなか壊しいたいいたいいたいいたいって!」
大声で暴れると、「うるせえな」と渋面で岩ちゃんは、俺の前髪を引っ張っていた手を離してくれた。はらはらと数本の毛が、その解かれた拳から舞い落ちる。
「ハゲたら岩ちゃんのせいだ」
「はげろ。責任は取らない」
すこし調子の戻ってきたらしい岩ちゃんの重い口を、それから宥めたりすかしたりしながら開かせたところによると、どうやら昨日だか今日だかに、岩ちゃんは女の子になったようなのだった。機嫌がよくないわけだ。俺はどぎまぎしてしまう。
「何して遊ぶ?」
色々と詳しく聞きたいところではあったが、さすがにそこまで俺も無神経ではないし、俺の告白されたって話もぶったぎられて終わってしまったので、岩ちゃんの心が楽しくなりそうな話題を探す。
「んー」
と子犬のように唸って、岩ちゃんは、きょろ、と目を上へ向けた。
そこに何かがあるとかでなくて、考えているのだ。次は何て言うのかな。岩ちゃんの返事を待ちながら、岩ちゃんを見る。ショートパンツから伸びた足の、ふくらはぎが丸い。
岩ちゃんに触りたいという欲求は、てっきり男だと思っていた小学3年生の頃からあって、俺は友達の中で一番会話が弾んでぐいぐい引っ張ってくれて尊敬できるタイプの岩ちゃんのことが大好きだったから、隙あらば頬を寄せたり肩を組んだり足でつつきあったりしたかった。岩ちゃんにくっつかれると嬉しかったし、大きな瞳に間近から見つめられるとどきどきした。
しかし、あのふくらはぎにペトリとでも手で触ってしまえば、俺は変態の痴漢ということになるのだろう。岩ちゃんはそこまでは言わないだろうが、それでも気色悪いとかクソウザイとか精神にくる悪口を言って、そして、俺のことを少し、気味が悪いと思うようになるだろう。
岩ちゃんの膝は小さく丸く、ふくらはぎの膨らんだところは桃のような輪郭をしていて、かかとは握り締めるのにちょうど収まりのよさそうな尖り方をしていた。桃色の小さな爪が生え揃った足の指先が、たまにぴくぴくと動く。触りたすぎて疼く。こんなにも寄り添いたいと思う存在は他にない。見ていると息が苦しくなる。喉の奥を、何かがふさいでいるのだ。
そうか。女の子になったのか。
男同士なら触ったって痴漢にはならないし、連れションだってできるのになあ。
「くそかわー」
「何だよ、やな呼び方やめろよ」
「こっち」
と岩ちゃんが自分の隣、布団を叩くので、俺は「うんうん」と素直に寝っ転がりに行く。
「ちょっとごろごろしてから、まんが読む」
「ごろごろってさあ」
「ねみ~」
岩ちゃんは猫のようなあくびをした。まったく獣のような人だ。
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