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2025/01/10 (Fri)
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2014/01/04 (Sat)
「必殺レッドリディングバスター」
Comments(0) | ハイキュー!!
岩ちゃん女体化の及岩小説です。













必殺レッドリディングバスター







岩ちゃんは俺の部屋に入ってくるなり、ぶるる、と身を震わせた。
「この部屋、寒くね?」
「そうなんだよ。だから、布団から出られなくって」
この中は暖かくてとても快適なんだよ。
「もう、ダメだろ。はやく、出て」
ごそごそと布団の中を探る岩ちゃん。俺の手をぎゅっと握って、引っ張る。
「もう、及川」
「だって~」
「ううう」
岩ちゃんが、きゅ、と俺の手を抱き締めて、大きく震えた。「ほんとに寒いよう」とおろおろ白い息を吐く。岩ちゃんの手が冷たくなっていてきゅんとする。かわいそうかわいい。
「い、岩ちゃんも、ここ入ったら」
だめもとで提案すると、
「いいかなあ」
と眉尻を下げて考え込んだ。
い、いいよ。全然、いいよ。あっでもちょっと困るかも。
忙しく頭を巡らせているうち、岩ちゃんは「じゃあ」と発してブレザーを脱いだ。白いブラウスの長袖の下、肌色がうっすら透けいてる。寒そうだよ岩ちゃん、ああ、ポリエステル越しでもなんてきれいな小麦色なんだ。
掛け布団をちょい、とめくって、ひんやりした空気がうわー、のすぐ後に、一回り以上小さい身体が隣に滑り込んできた。あああああ。
大慌てで抱き込むと、あ、と声を上げて、「あったかい」と笑ってくれるので心臓がぶっとんで頭が溶けそうになる。
「い、いわちゃん」
抱き締めちゃうよ、俺は、こ、渾身の力で。
「あ、うん、及川、うう」
苦しそうな岩ちゃん。しょ、しょうがないだろう。
「あ、あの、こうしたら、あったかい」
「熱いよう」
頬っぺたと唇を赤くして、岩ちゃんが呻いた。
ぽろりと、涙をこぼす。
「い、い、い、い、いわ、いわちゃん」
どぎゅ、と肉の潰れる音が身体の中からする。いわちゃん。きみは人殺しだ。
「いわちゃん」
「ん、んん、及川」
「ああ、あああ、岩ちゃん、くそお。岩ちゃんなんか、なんか、」
「きゃ、きゃあん」
岩ちゃんが、記憶にある限りでは一度しか聞いた覚えのない悲鳴を上げる。冷たい缶ジュースを首にぺとって悪戯した時、あの時は鼻血が出るまで殴られた。でも今は殴るどころか縋り付いてきてくれる。拳も拳で愛おしいが、きゅっと胸のとこ握ってひっつかれたら俺はもう。俺はもう。俺はもう。だめだ。人間でいられない。
ボタンがはじけ飛ぶ。袖が破れる。シーツが舞い上がって羽毛の嵐だ。あああああああああああああああああああ岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃん岩ちゃ






「いわちゃん」
と、ちょっと寝癖のついた黒髪の後頭部に呼び掛ける。
「おー」
と振り返った岩ちゃんは、露骨に顔を顰めた。
「お前また、寝不足の顔してる」
責められて、
「最近、夢見がちょっと」
と取り繕う。嘘ではないしね。
「モーニングコールはどしたんだよ」
「付き合って2ヶ月にもなると色々なおざりに」
ええー、などと夢が壊れたような顔をする岩ちゃん。
「早えよ。けっこう、一緒に帰ったり、うまくやってたじゃん」
「なんか最近は一緒に帰れたら帰ろうみたいな感じで。あっち予備校あるしねえ」
そういえば、ちょっと疎遠ぎみでやばいかもしれない。
「今日は会うかも。メールしとこ」
そもそもこっちが部活だので多忙なのが疎遠の原因だ。申し訳ない気持ちはあるのだ。しかし、去るなら去るで追わないよ。
「ふうん」と相槌を打って、進行方向へ視線を戻す岩ちゃん。北風に立てたジャージの襟、その内側にだいぶん白くなってきた首筋が見える。
岩ちゃんの、首すじの、匂いが嗅ぎたい。
あたたかくてほのかに甘い匂いがするはずなのだ。心が弱っているときには他の何よりも覿面に効く。苦しくもなるけれど。あーほとんど日焼けの痕が消えちゃってるな。新陳代謝が活発なんだな。汗っかきだし。
鼻先が、ふらふらと吸い寄せられる。
くっつかんばかりに寄っていく俺の気配に気付いて、岩ちゃんはハッと首筋をおさえて後ずさった。顔がこわばっている。
「なに」
「え、いや」
真顔で問われて、口ごもるどころか呂律が怪しくなる。
「虫がいると思ったけど、違った」
そうか、と言って、岩ちゃんはほっと緊張を解いた。
驚かせてごめんね。
でも警戒されたショックで声にならない。岩ちゃんはその後ずっと、言葉少なだった。



センターよブロック振られすぎ、ちょっとちゃんと見てくんないかなあ。俺は本気を出してない。こないだ監督にセッターポジ入らされてたでしょ思い出してホラあーもう。
ミニゲームが終わり、休憩中にBチームの1年、準レギュラーのセンターを呼ぶ。
「横移動遅いよ」
「す、すみません」
「あとちゃんと俺のこと見なね」
「はい」
ふー。
ため息を一つつき、ふと、目が遠くなる。
体育館の外は、もう暗い。
俺の胸の中にも、冷たい風が吹いている。パイプ椅子に腰を下ろした。人生ってなんだっけ。
「あの」
「ん?」
背筋を伸ばして直立したままの後輩が、微妙な面持ちで問いかけてくる。
「あの。先輩、大丈夫すか」
「何が」
ふふふ。
強がって笑ってみるけど頬が引き攣る。だめだ絶対目が笑えてない。
今日一日中べこべこにへこんでいた。
「岩泉先輩と、何かあったんすか」
「うっ」
変なうめき声が出る。
「あ、しっ、バカ」
「うわあ言ったよ」
「むしろ行ったよ」
「行っちゃいけねえとこに突っ込んで行ったよ」
うるさいよ外野の2年うるさいよ。
「ななな何もないよ」
「及川震えてるぜ」
「何かあったんだな」
「決着ついたらどっちに転んでも神輿を出すのになあ」
「ちょっとそこほんとうるさいよ!!」
人の恋路だかなんだかを祭りにすんじゃないよ!
「本当に、別に何もないけど、今日は調子悪くてね。言葉とかきつかったら悪かった」
謝る俺に、
「いや、でも、岩泉先輩そこ来てますよ」
俺は椅子ごとこけた。
床の冷たさを頬で味わっている暇に、マッキーさんがそそそと体育館出入口に歩み寄っていく。ちょちょあなたこないだ何か言ってましたね、待ちなさいよ。慌てて起き上がった。
何事か話している二人に駆け寄っていくと、
「及川」
マッキーがちょいちょいと手招きを。
「なんか用だって」
「なーに、岩ちゃん」
岩ちゃんはぱんぱんのメッセンジャーバッグを背負い、帰り支度を整えてちんまり立っている。どこがとは指摘が難しいけれど、少し様子がおかしい気がする。
今朝からそうだ。
人んちで風呂つかって裸見られても若干暗くなるだけの君が、なんでそんな警戒すんの。
俺のせいなの。
怯えられるなんて俺は死にたくなってしまうよ。
「ケンカしてる?」
声を潜めて責めてくるマッキーに、岩ちゃんと二人同時に首を横に振る。
「そんならいいけど」
と、飄々とマッキーは部の輪の中へ帰っていった。くそ男前野郎めが。
もやもやしている俺の袖を、す、と岩ちゃんが掴んだ。
「ちょっと」
と引っ張って俺を連れ出す。はい、どこへでも。
玄関口のすぐ外側で立ち止まった岩ちゃんは、
「今日、一緒に帰ってくんねえかな」
と切り出した。
「いいよ」
脊髄反射だ。
「いや、彼女のほう大丈夫だったら」
「あー」
結局、メールしようと思ってメールできていないのだった。岩ちゃんのせいだ。触れかけたら拒まれてからこっち、今までずっと、頭が真っ白でどうにも正気でなかったのだから仕方がないじゃないか。
「大丈夫だよ」
でも、どうしたの。
こんな風に改まった感じで、岩ちゃんがやってくるのは初めてだ。
あのな、と岩ちゃんは、重たそうに口を開いた。
「昨日、バス降りてから変な奴が後ろついてきて、走ったんだけど家の近くまで追っかけられたんだよ。ちょっと誰にも言いにくくて、一人で帰るのがなんか嫌なんだ。一緒に歩いてくんねえかな」
悪いけど、と心細げに結ぶ。
世界中の音が遠のいた。
「わかった。どっか、中で待ってて」
「うん」
悪い。と男らしく頭を下げて、女子の部室棟へ走っていく岩ちゃんの後姿を見送ってからはっとした。あそこも、もう暗いのに。ソフト部とか遅いから大丈夫だろうけど。ああ中で待たせればよかった。でも所在無いだろうし。
心中穏やかでなく中に戻ると、数人に囲まれた。
「なんだって?」
「あーなんか、ちょっと岩ちゃんちに用できて送ってくことになった」
「なんだ期待させやがって」
「お前にはがっかりだ」
「いじるネタにもならねえ役立たずが。爆散しろ」
「仮にもチームメイトに対して毒舌が過ぎないかいおまえら!!!」
でも、と松つん。
「最近バス通りに変質者出るらしいから、送ったげた方がいいだろうな」
それから何をどう練習したのか記憶があまりない。こんなことも、初めてだ。




帰り道。何故か岩ちゃんに、彼女を大事にしろという旨の説教を受けた。
「今日は助かったからおれが言うのもなんだけど、お前、釣った魚に餌やらないみたいな所あんべや」
確かに、交際に関しては、盛り上がってから冷めるまでのスパンが短いとは思う。
誰かと付き合いながら、次に付き合う相手をつい探している感じがあるのも自覚している。
「大事なもんはちゃんと大事にしろよ」
だからしてるじゃないか。
「もー手厳しいなあ。女の味方は女ってほんとだな」
ぼやくと、あほか、とまた怒られる。
「おれはお前の女なんかどうでもいんだよ!おれはお前が付き合ってる相手をないがしろにしてるってのが、お前が自分で自分をないがしろにしてるみたいでそれがムカつくっつってんだべやボケ川!」
殴られる。
岩ちゃんの拳はどんなくちづけや抱擁よりも甘い。
月のない宵の口。冷たい空気の上で星がきれいだ。俺を殴り疲れた岩ちゃんがぶるると震えた。
「さみい」
そろそろマフラーを出したほうがいいよ、とか口をききながら、今朝の夢を思い出す。頭を振る。
「岩ちゃん」
「んだよ」
「大丈夫だったの?」
「何が」
「追い掛けられて」
「大丈夫じゃねえよ」
行く先の道をまっすぐ睨みながら、岩ちゃんは自分の肩を抱いた。
「後ろから抱き付かれたんだ、ちぎって逃げたけど。しんどい」
「岩ちゃん」
「なんだ」
喉がからからだった。
「明日も送るから」
「ありがとう。でもいいよ」
「よくないよ」
星よりも君が大事すぎて、俺は気が違いそう。
バスを降りてから家あたりまでは、10分ばかり歩く。しゃべっているとすぐだ。
ここでいいよ、と岩ちゃんが言った。
「岩ちゃん」
「ん?」
振り仰いでくれる岩ちゃんの顔は、やはりいつもとちょっと違う。元気がない。
「抱っこしてあげようか」
両腕を広げた。
「は?」
岩ちゃんの顔が、思い切りしょっぱくなる。
「もし俺が知らないおっさんに抱きつかれたら、すげえ気持ち悪くてどうにもなんないけど、そのあとで岩ちゃんがぎゅってしてくれたら、だいぶ気分がマシになると思うから」
消毒ってやつだよ。
いやならいいけど。
「お姫様だっこでもいいよ」
岩ちゃんの手刀が、俺の眉間を打つ。
利き手を俺の額に乗せたまま、岩ちゃんは、ふっと右を見た。
釣られて同じ方向を見る。夜道の一車線が街灯に照らされて暗闇へ伸びている。
岩ちゃんの頭が、今度は左を向く。同じく、俺の視線もそちらへ移る。車の気配もない。誰もいないよ?
周囲の無人を確認した岩ちゃんは、二歩で俺に近寄って、おでこを胸に押し当ててきた。
慌てて肩を抱く。背中に手を回す。気持ち悪いものがみんな取れますようにと優しくなでなでする。抱き締める。
肩の小ささにびびる。目で見る以上に、年々体格差が甚だしくなっている。その小ささが、俺の胸の柔らかいところをえぐる。どぎゅ、と内側の深いところから、肉に錐を刺す音がする。岩ちゃんに欲情した人間は、俺以外その瞬間に即死する呪いがあればいい。
岩ちゃんの手が、俺の胸を押した。抱かれるのを嫌がる猫みたいにして顔を起こす。
見上げてくるその瞳は、きらきらしていた。頬が上気している。元気が出たみたいだ。
ありがとう、と岩ちゃんは真面目な顔で言った。

こんなにきれいなものは生まれて初めて見た。

てくてくとおうちの前まで歩いていく岩ちゃんの後ろを、まともに膝の立たない足で追いかけていくのが、やっとだった。






家に帰ってからがまた俺は大変だった。抱き締めた腕に残った感触がそれこそ呪いのごとく消えない。玄関にも廊下にも居間にも自室にも、そして風呂場にも彼女のおもかげははりついている。夢を見るどころじゃない。眠れなかった。胸が、張り裂ける。どうすればいい。
枕を殴る。100回でも足りなかった。







数日後。
俺は付き合っていた彼女と破局した。


おしまい










<痴漢ネタが少し辛申し訳なかったので自分救済のための蛇足>


翌朝のことだ。なんかどうしようもなくて、岩ちゃんの家まで朝練の迎えに行った。いいっつってんのに、よかないでしょうが、となんだかんだ言い合いながら歩いていると、前方から人影。
俺と同じくらいの背丈だ。ガタイがいい。ちょこっと髭面。こわもてだ。岩ちゃんが、びくっとして、一歩下がる。なんだこの男は。
「あの、おとといは、すんませんした!!!」
男は勢いよく頭を下げた。ハーフアップのちょんまげが、眼前でぴょこんと揺れる。
「あの、そこのかた、バス降りて定期しまう時カバンからこれ落としたでしょう、ガム、俺たまたまそこにいて拾って、別にいいかなと思ったんですけどでもやっぱり食べたいときになかったら困るかなと思って渡そうと思って追いかけたんですけどでも、俺顔恐いんでよく子供に泣かれたりとか、それで何て話しかけたら大丈夫かなーと思ってずっと後ろ歩いてたら走り出されちゃって、追いかけたんですけどなかなか追いつけなくて、足速いですね俺もう必死になっちゃって、それで石に躓いちゃって、びっくりしたんですけど転んじゃって、それですみませんおもいっきりぶつかって押し倒しちゃって、わーしまったもうこれごめんなさいと思って転ばせなかったからまだよかったですけどほんとすみませんでした!!!悪気はなくて!!!ほんとごめんなさい……ごめ…これ…」
男は泣き始めた。
「ごめんなさ…これ…」
「あ、いや、いやその」
無意識に後ろに庇ってた俺の背中から、こちらこそ、と出てきた岩ちゃんがガムを受け取る。
何度も何度もお辞儀をしながら去っていくをの姿を見送って、岩ちゃんはつぶやいた。
「あの人、いろいろ、大丈夫なのかな」
俺も今そう思っていたところだよ。






ピチピチガラスハートごめんおしまい

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