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2010/10/13 (Wed)
「● 目喰ひ合ひ(宮一)」
Comments(0) | 一歩(宮一)

宮一キス話です。














目喰ひ合ひ









どんなに時間をかけてもなかなか滅多に、一歩は最後の一寸、扉が閉まりきる前の、逃げる隙間を閉ざさない。
完全には身を預けてこないのだ。
腹立たしいというよりも切ない。癪なんだが。
宮田は両腕に力を込めた。
右手は相手の後頭部を支え、左手は腰を巻いて抱き、双方強くこちらへ引き寄せている。力を込めなければ逃げられる恐れがあった。
眼前でしっかと瞼を閉ざした一歩は動けないでいて、硬く緊張した体はしかし今のところ宮田の為すがまま。
俺が欲しいと言っているのだからきっと、こいつは与えてくれるのだろう。
舌で舌を玩ぶ。飽きない。むしろ次第に熱くなる。
昂ぶる。苛立つ。血が上る。上下の前歯で舌を挟んだ。力を込める。柔らかい感触と肉の抵抗。
驚いたのだろう、一歩の瞳が薄く開く。戸惑いと責めの色がそこにある。
語る言葉を持たない獣になったつもりで視線に力を込めながら、顎へ少々力を加えた。肉に歯が食い込んだ。一歩の眼が宮田の見るすぐ至近で揺れた。宮田は初めて舌を入れた時のことを思い出した。

怯み、逃げたがる一歩が腹立たしくて、立って歩く気力も失せるほど長くしつこく力ずくの口付けを強要した。
解き放され、床へ崩れ座って宮田のベッドへ上半身を縋らせ、半分まどろむようにしながら息を整える一歩へ、宮田は手を伸ばしたのだった。
頭を撫でた。
すると一歩の瞳は幼く嬉しげに細められ、欲しかったのはコレかよと宮田は少々愕然としたものだ。

その、とろとろ熱っぽい甘い瞳。
欲しがってるのか。
宮田は更に深く歯を立てた。
錯覚なのか。俺の独りよがりな思い込みか?食べてしまいたいから食べてもらいたいと思われていると思いたい。もっと乱暴に一つになりたい。この歯で。手で。眼で。返して欲しい。返してみろよ。
痛いのだろう、一歩の目尻に涙が浮かんだ。
ぷちぷちと涙が眼の縁に湧いて、すぐに溢れて火照った頬へ落ちる。
眉は切なげに寄せられていた。
瞳の色は。
とろとろと、どこか眠たげな。
欲しいのかと呼びかけたつもりで視線に力を込めると、欲しいと応えて一層その瞳が熱く潤んだ、と宮田は思った。



















「・・・ひどいよ・・・みやたくん」
一歩は3割方べそかきの面体で、弱々しく宮田を責めた。
ほら、とその口からぺろり、出された舌には見るからに痛々しい赤い歯型が残っている。
宮田は舌打ちをして、部屋の隅へ投げてあったバッグからミネラルウォーターのボトルを探した。
「痛かったかよ」
一歩は顔を伏せて乾かない涙を手の甲で拭った。
「痛かったよ」
「そうは見えなかったぜ」
「え」
きょと、として上げられた一歩の視線に、宮田の視線が絡みつく。
眼で探る。
「怖かったかよ」
目が合ってすぐに視線を逸らすと、宮田の機嫌は損ねられる。二人だけで居る時ならそれは尚更で、だから一歩はなけなしの度胸でもって、鋭いその眼光を受け止めた。
「・・・怖かったよ」
食べられるかと思った、と呟く一歩へ向けて、宮田はペットボトルを放る。
残り少ない中身のそれは、床に座る一歩の足元へぶつかり、咄嗟のことに受け取り損ねた一歩はあたふたと必要以上にうろたえた。
「あっ、ゴメン」
「怖がってなかったじゃねえかよ」
「こ、怖かったよ」
「ふうん?」
疑わしく返しながら、宮田は壁に背を預けて座り直す。
「怖かったけど、宮田くんになら食べられたくなっちゃったの」
言い切って一歩は手元に目を落とし、ボトルのキャップをくりくり捻った。
そこだけ白いプラスチックの飲み口に唇をつけ、呷りかけて、首を膝の間に落とし込むような格好で項垂れた宮田に気が付く。
「どうしたの、宮田くん?」
どうしたもこうしたもあるかい。
「宮田くん?」
不審そうに呼びながら、一歩が立ち膝でいざり寄ってくる。
覗き込まれて堪るか。
今だけは一歩と視線を合わせたくない宮田は文字通り頭を抱えた。
髪に差し込んで頭皮を鷲掴んだ指に力を込める。
コイツのせいできっと将来オレはハゲると宮田は思った。















あとがき

は げ ろ! は げ ろ!
すみませんそんなところに力点を思わず置いてしまう。
たまに本気で禿げ上がりそうな思いを味わっているといいな宮田くん。
ハゲはともかくなんかこう、目と目で・・・な話を、一度書いてみたかったので…!
作者も題名も忘れてしまった昔読んだミステリ内に、
「男と女のあのことを『まぐわい』と言うけれど、
それは『目と目で喰い合う』からきた言葉なのよ、
だから相手とじっと見詰め合って視線を絡ませ合う事は、
あのことをしているのと同じなのよ」と、
うろおぼえながらこんな感じの台詞が出てきて、
その内容が本当かどうかは判じかねつつも、
ヒー嫌トリビア!と激しく燃えたのでした。
鉢雷(ニンタマ)でやりたーい!と思ってましたが宮一でネタ浮かんじゃったよ!
でも両思いな宮一は自分にはハードルが高すぎると思い知りました!
両思いは難しいです 私は生殺しが好きです

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