双子と関係ないんだけど;「彼方から」をイッキ読みしました。
うおおー!
ガラゴ大好き!ドロス大好き!ノリコもちろん大好きー!
ラストシーンは、異世界をまたいだラブコメということで、なんかエスカとくらべちゃって、どっちもありなんだよねーああノリコよかった・・・瞳もよかったけど!としっとりしました。
双子がお花なパラレル話のような、恥ずかしいポエムのような感じのものを続きにおきます。
以前、一度ここにあげて、一旦下ろしてたのですが、続きができたので再アップします。
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阿含は大輪の薔薇でした。
雲水は野に咲く菊でした。比喩でなく。
野菊は、見目も華やかに匂い立つ弟が眩しくてなりません。
「おまえは本当に目立つなあ」
「いいだろ」
「目立つのがうらやましいとは思わないが…誰もがお前に釘付けだものな。美しいものなあ」
「美しいだけじゃないぜ」
「香りもすばらしいものな。しかし阿含、奢り高ぶるな。あまり調子に乗ると人に摘まれるぞ」
「人なぞ怖くもなんともないね」
「俺が守るからな」
「・・・・・・」
広げられた兄の腕からは、菊の葉の良い匂いがして、阿含は春菊のおひたしが食べたくなりました。
ある日。
不意に人の手が降りてきました。
「阿含!」
美しくも香り高い、天上の花のごとき弟を攫いに来たに違いありません。
雲水が前に出るのを待たず、手はしかし、阿含の横を通り過ぎました。
「やあ、可愛い花が咲いてる」
「あれ?」
「あ゛?」
疑問の声を上げるいとまもあらばこそ、雲水は手に摘み取られておりました。
「白くて小さい。かわいいなあ」
弟と間違えて摘み取られたのかと思えば、白くて小さいとは。どうやら自分に他なりません。
雲水は、自分を摘み取った手の意図が分からずに、ただその長細い指の中で眉間に皺を寄せるばかりです。
「けなげで美しい」
けなげなどと、美しいなどと、とんでもない事を言われたのは生まれて初めてです。
雲水は驚いて、自分を摘んだ手の主をまじまじと眺めました。
女好きのしそうなかなりの男前で、そこは同じ男として微妙に気に食いませんでしたが、苦しげに眇められた柳眉の様子が何故だか不思議と心に掛かりました。
「俺と似ている、君は。いや、君は俺などよりも、よほど頑張り屋だな。勇気をくれる」
ところで幽々白書をご存知でしょうか。
一昔前に人気のあった少年漫画です。蔵馬という人が登場します。必殺技を使います。薔薇棘鞭刃と書いてローズウィップと読みます。バラのムチであります。
鋭い棘だらけの薔薇蔓を、鞭のごとくびしばしやるわけです。
阿含が繰り出したのも、ちょうどビジュアルで言えばそれと同じものでした。
「うわっ!いてっ、いてて」
「阿含!」
手の甲を、鋭い棘が密に生えた蔓でおもくそ引っ叩かれ、憂いげな顔の色男は雲水を思わず手放しました。
「ボサっとしてんじゃねえよ雲子があ!オラ来い走れっ」
「あ、ああ」
どうやら弟に助けられたようです。助けるつもりで飛び出した結果がこれで、情けないことでした。
雲水は歯噛みしながら阿含に続いて走ります。
何故だか、ありもしない後ろ髪を引かれました。
頑張り屋だな。勇気をくれる。
屈辱でした。
同時に、助力になったのかと、ほだされる気分でもありました。
なぜこんなにドキリと気になったのか、あの人の顔が、声が、忘れられない気がするのかわかりませんでした。
ずっと後ろ頭に視線を感じていましたが、雲水は振り向かずに走りました。
華やかに濃厚に、美しい色に輝く、弟の背中を追って。
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