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2025/01/10 (Fri)
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2010/12/11 (Sat)
「伽藍堂に咲く②」
Comments(0) | ES21:双子

下の続きです~。
これには桜庭出てこんです。
ああああ今言い忘れていたことに気がついたんですが、下のパロ話に出てくる雲水摘んだ人は桜庭です!
桜雲です。
桜雲が大好きなんです。ていうか阿雲前提で桜庭と雲水が仲良くしてるのが好き!
でもこの②の続きは全然考えてないです。







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阿含は大輪の薔薇でした。
深紅に芳香、華美にして高貴、誰もが我が手にと望んでやまぬ天上の花でした。
迂闊に摘み取ろうと伸びてくる手を、阿含は容赦なく血達磨にしました。阿含の棘は鉄のように硬いのです。
自分のものにできぬならせめてと、周りを囲んで愛でようと群がる者は後を絶たず、阿含は好きにさせていました。触れればオートで串刺しです。身の程知らずの哀れな末路と、阿含は睥睨しておりました。
阿含の双子の兄は野菊でした。白くて小さい野の菊でした。いつでも阿含の傍におりましたから、誰もこの兄の姿を目には留めませんでした。
なにしろ阿含は世界に類を見ぬほど美しく逞しく、その芳しさたるや噎せ返るほどだったのです。傍らのありふれた白菊などは陰に隠れて気付かれもしません。
「阿含」
兄は手を伸ばします。
「阿含、何をしかめつらしている」
兄の傷だらけの手が、阿含の額に触れようとします。
「触るな」
「偉そうに」
穴だらけの兄の手が、髪を梳きながら頭を撫でてゆきます。
「触るなって」
兄に触られると、心地よくてむずむずするのです。
「なら、その構われたそうな顔をやめろ」
「してねえ」
「してるだろ」
雲水は両手で阿含の頬を挟み、まじまじと眺めました。
「見ンな」
「そうか」
目を逸らします。
「離せ」
「うむ」
「血がついたじゃねえか」
「すまん」
阿含は自分の鋼のような棘が、誇らしくてなりませんでした。忌々しくてなりませんでした。
深紅の花弁も、匂い立つ芳香も、誰もの目を奪う華美も、誰にも触れられぬ高貴も。
迂闊に伸びてくる手を、阿含はいつも容赦なく血達磨にしました。
涙を拭いてくれようとする兄の手すら。兄すらを。
兄こそを。
泣けば兄が抱きしめようとする。兄は傷つく。俺はもっと泣く。兄は血を流し過ぎていつか死ぬだろう。
花弁の白い産毛を真赤に染めて。
阿含は、その日を恐れているのか待ち望んでいるのか、自分でもわからないのでした。





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