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2011/02/16 (Wed)
「まも姐」
Comments(0) | ES21:男女CP


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まも姐はとてもすごくよいヒロインだと思う。
特に二巻冒頭の強気まもねえが好きっ・・・
気の強い学級委員長タイプの女子はもともとツボな気がするし、とにかく好きです。好きですたい。
セナとの保護者・被保護者関係は、セナの人格形成にかなり影響してて物語の軸でもあるし、ヒル魔との絡みはひたすらときめきます。やーもう。
というわけで(?)、出遅れたけどバレンタインヒルまも話を畳んでおります~。
でも、ヒルまも大好きなんですけど、表面上は敵対したり事務的に付き合ってるけど、根っこはお互いのことを理解していて信頼もしているビジネスパートナー的な二人が眼からよだれが出る勢いで好きなので、私の書くヒルまもにラブラブは多分あまりないです。

でもよく考えたら、デビルバッツなヒル魔とまも姐のバレンタインは、クリスマスボウル終了してからだっ・・・・・・









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「はい、ヒル魔くんにも。チョコ。」
差し出すまもりに部内は凍りついた。
「売ってるのより甘くないし、コーヒーに合うよ」
手作りなのである。校内の男子生徒なら10人中10人が喉から手を出す姉崎謹製のバレンタインショコラだ。それをヒル魔は片手でしっしである。その場に居合わせてしまったセナや栗田はともかく、モン太までも声なく冷たい汗を流す一時だ。
「デビルバッツみんなのぶん、作ったんだから」
そう、佐竹山岡などは泣いていた。石丸さんの「気を遣わせてゴメンね」という、気を遣ってるのはお前だろという受け取り姿勢にはまもりが泣いた。弟妹さんたちのぶんも、と数個追加された義理チョコの袋包みに、石丸は道祖神のごとき微笑で甚だ恐縮していた。
「手作りな。ケケケ、安くあげやがった」
「お金じゃないでしょ、気持ちを込めたんです。が、がんばろうねって。それに、色々工夫してあるのよ、生クリームとハチミツで生チョコっぽくしたりとか、そのぶんベースをカカオ濃いめにして、ナッツは香りが出るまで炒って」
「まもりねえちゃん、ス、ストップ」
セナが片手を挙げて降ろした。
「栗田さんが」
よだれを流しておられる。
「姉崎さん、あの、開けてもいいかなあ」
巨体なのに小動物の風情をいかんなく醸し出す栗田だ。まもりは心から詫びて勧めた。
「あーごめんね、どうぞどうぞ食べて~!」
「わーいこの袋かわいいね、このリボンほどくのもったいないね~でもごめんねほどくね。わああかわいいねええ~おいしいー!」
「よかった~!」
手製の菓子を喜んでもらえれば、それはもう嬉しい。甘味好きのまもり、甘味好きの栗田に笑ってもらえたのだ、はしゃぐのである。
「栗田くん甘いの詳しいから、褒めてもらえてうれしいー」
「おいしいよ~、姉崎さん、おいしいよ~。それにこの丸い形かわいくて食べるのもったいないよ~」
「食べていいよ、食べて食べてー!」
「うん、食べるよ食べるよお。わあん香りもサイコーだねえ」
「そうなのアルコール飛ばしたブランデーをふりかけたの」
「すごいやすごいや」
喜びを分かち合う二人の光景が心温まってしょうがなく、セナとモン太は目尻に浮いた涙を指で拭った。ヒル魔は呆れたような半眼である。
「ヒル魔も食べなよ」
と栗田がこのテンション、この流れで勧めてくるのに、
「いらね」
とにべもない。自分へと、机の上に乗せられていた包みを、人差し指で押し返してからノートパソコンと猫背で睨めっこだ。
「もー」
とまもりが気にした風でもないのは、この対応を予想していたからだろう。
「苦手なのはしょうがないわ」
と、諦めてプレゼント包みを引き取ろうと、ヒル魔サイドに手を伸ばす。無視されたままのリボンを指でつまみ、するすると、自分の方へ引っ張る。
「みんなに、って思ったのに」
「その他大勢でまとめられたモンもらって嬉しい野郎の気が知れねー」
憎まれ口を叩くヒル魔である。
まもりは黙った。
部室内に沈黙が下りる。
キーボードを最小限の音で叩くヒル魔の指と、口の周りについたチョコをぺろぺろ舐める栗田の舌だけが動いている世界だ。
「じゃ、その他大勢と一緒じゃないチョコレートなら受け取るの?」
まもりが爆弾を投下した。
「は?」
ヒル魔が虚を突かれて問い返したことに、セナとモン太は更にびびりあがる。
そろりと横目でまもりを窺うと、こちらも自分で言っといて自分でびっくりしていた。
思った事がそのまま口に出る事って、誰にでも偶にある。いや無理強いも追及もするつもりはなくて、今のは好奇心というかノリツッコミというか!
言い訳が頭の中で飽和して、赤面しそうなのをこらえて黙ってしまうまもり。
ヒル魔はその手から、かわいらしい桃色ドット柄のペーパーナプキンが巾着型にラッピングされた包みをもぎり取った。
気使いも感動も何もなく、紐を解いて包みを剥いで中身を噛み砕く。
無意識に、PC操作のためにちょっと遠くに避けられていた缶コーヒーをヒル魔の手元に戻してあげてしまうまもり、やはり殆ど無意識に問う。
「お味は」
「糞甘ェ」
でしょうね。まもりはがっくりした。が、すぐに気を取り直す。
「でも気持ちは伝わったでしょう」
「あ?」
「がんばろうね」
ヒル魔は嫌ぁぁぁな顔をした。苦虫をかみつぶしたような、とセナは比喩の言い回しを思い出す。
今、彼の口の中にあるのは、さきほど自分が食べて頬っぺたがとろけるみたいな心地がした美味と同じもののはずなのだが。
苦そうにそれを飲み下し、コーヒーを呷って一息ついてから、
「…そうだな」
肯定した。
悪寒しか感じられない真摯な声音である。
「勝つためにな」
口が裂ける。
「血反吐を吐いてもな」
悪魔が牙を剥く。
「骨が肉を突き破ってもなああああ!」
「ひいいい!」
「いやあああ!」
「何言ってるのヒル魔くん!しごきは風紀委員として絶対見過ごさないからね」
「テメエが言い出した事だろうが、頑張ろうってなあ」
「常識の範囲内で健全に向上心を養おうという意味よ!」
「バレンタインに教訓込めんなバーカ!」
「教訓の何が悪いのよ行事ってそういうものでしょう!?」




セナとモン太は、けんけんがくがくの男女と、性別を超えておろおろしている栗田を置いて部室を後にした。
公園でブランコに腰かけ、ブランデーの香りとナッツの歯応えが絶妙なソフトショコラを二人で食べた。
「…おいしいねー」
「…そうだなー」
「……おいしかったら、いいじゃんねー…」
「…そうだよなー……」
食べたらエネルギーになるのだ。ブツがチョコなだけにもうギンギンである。なんだか夕日もビルの谷間に綺麗く沈み始めているし、モンタには生来備わり、セナにはここのところで培われてしまった体育会系の血が無駄に滾る滾る。
「走ろうか!」
「おう!」
この胸のモヤっとした感じを吹き飛ばすためにも。
若い二人の駆け足は、町内を一巡りするまで疲労することもなかった。

 

****************************************** 終

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