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2011/11/28 (Mon)
「女神と悪魔が」
Comments(0) | ES21:男女CP
ヒルまもが大好きなんですが、モン太のことを考えると切ない・・・だがそれが楽しい。
ヒル魔とまも姐が付き合い始めた、とかいう噂が流れたら(なんか常に流れてそうだ)モン太はかわいくショックをうけてかわいくションボリしてかわいく立ち直ってかわいく祝福するんだろうなと。
鬱鬱と、もやもや、いやいいんだけどべつに、へえーふうーんもやもや、ってなるのはセナ。だったらいいな。
でも実際、ヒル魔とまも姐が付き合うって、想像できない~。ルイメグもそうなんだけど原作のパートナーぶり以上の関係ってもうないぜよみたいな!ハスハスハス

なんかずっとそんなのを考えてて、ちょろちょろ書いてた、なぜかモン太と雲水の話です。続きに置いてます~。











女神と悪魔が







公園のベンチに雷門太郎が一人腰かけていた。
夜だ。
日の沈むのが早くなったと実感し始める昨今。肌寒いを通り越した朝晩の冷え込みに、公園を通り掛かった雲水はマフラーを巻いていた。ぐるぐる巻きだ。
お前が巻くとマフラーって感じしねえな。襟巻だな。
そうコータローに揶揄された。自分で言うのも何だが、わかる。
月光に照らされるベンチ、無言で隣に座ってみた。声をかけられるような雰囲気でなかったからだ。
もぬけの殻、茫然自失、そうしているより他にない、そんな虚無を後輩から感じたからだ。
それでも、いつも明るくて可愛くて頼もしいエースな後輩を捨て置くことなど、人間的な心情からとてもできなくて、雲水は黙って寄り添った。
「雲水先輩」
やがて、モン太がびっくりした。
「ああ」
と雲水は肯定した。雲水です。います。
モン太は、混乱もあらわに雲水を上から下までじろじろ眺めまわしたあと、こんばんはと頭を下げた。
ああ、と雲水は再度頷いて、目線を中空の半月へ移した。
「お前がぼんやりしてるから、声をかけようかと思ったんだが、月に見とれて忘れていたよ」
わかりやすい嘘だが、雲水には嘘もロマンチックも似つかわしくないので、逆に真実らしく聞こえる。
ははは、と雲水とモン太は笑いあって、
「失恋しました」
と告白された。
雲水は言葉を失う。想定と許容の範囲外だ。
「そうか」
辛いだろうなと思う。同情するのは失礼とわかっていても、かわいそうにと思ってしまう。無言になる。
しかし、自分は先輩なのだ。
そしてモン太はかわいい。
雲水は立ち上がって、公園に立っている街灯横の自動販売機に歩み寄った。
100円硬貨を三枚投入して、少し考え、無糖のブラックコーヒーを二本買う。あったかければなんでもいいだろう。モン太がいつもはカフェオレばかり飲んでいることも知っている。苦いほうがいいような気がする、こういう時は。
モン太は受け取り、無表情でプルを起こし、ごくごくと飲み、にがーい!!という顔をした。そして取り繕うように笑って「ありがとうございます」とはにかんだ。高校時代の同級にして戦友、一休を思い出す。あいつもかわいいやつだった。あいつもよく、女子に飢えてたな。
失恋がどうとかまでの深刻な話はついぞ聞かなかったが、彼女が欲しいだの、アメフトは女子の支援がないだの、愚痴を聞くたびに思っていたことがある。
「見る目がない」
苦い薄いコーヒーを啜る。
胃が温まる。
「え」
「モン太を選ばないなんて、女の子は見る目がない」
言い切った。
「そんなこと」
モン太が鼻を啜る音は無視だ。
「お前はいい男だ」
「そんなことないです。むちゃくちゃヘタレなんす」
「そこも含めていい男だ」
雲水は低音の美声である。
モン太はしばらく沈黙してから、ありがとうございますと礼を言った。
でもね、と続ける。
「見る目あるっす。俺も、ヒル魔さんは、怖いけど、とんでもないけど、本当は優しいところもあるって、ほんとうに尊敬できる人だって、思ってるから」
雲水の口からコーヒーが吹きこぼれた。
「ヒル魔?」
「あ、はい」
ジャケットのポッケから、ティッシュを取り出して口を押さえる雲水。
「ヒル魔?」
「あ、はい。」
再度問われたモン太は再度答えた。
雲水は目を閉じた。眉間には渓谷のごとき深い谷が刻まれている。
「モン太」
やがて雲水が口を開いた。
「お前は騙されている」
「え」
「うちのチームの戦力低下を狙った心理作戦だ。お前の好きな娘の衝撃的な噂を流して、腕を鈍らせようという…!」
「は……!」
モン太の手から、缶がこぼれ落ちた。既に中身のない空き缶は、軽い音を立てながら足元を離れて転がりゆく。
「……い、いや。いやいや、確かにやりかねないですけど」
「やる。あいつはやる。モン太の純粋さを利用しやがって…」
「でも、まもりさんはそういうの乗っかる人じゃないんで」
「は?」
雲水は顔を上げた。まもりって。
「あのマネージャー?」
「はい」
「モン太の好きな女って、あの人か」
「……うう」
「え、あのマネとヒル魔が?」
「らしいって聞いて」
雲水は体を前に傾け、頬を両手で覆った。眉間に、更に深い皺が寄る。深刻そうである。
「あのマネとヒル魔が?」
「らしいです」
再度の問いに、再度の答え。
「嘘ならいいのに」
心から、雲水は言った。
思わずモン太は感想を漏らす。
「…雲水先輩も、男なんすね」
「人として当然の感想だ」
じろりと横目で睨みながら言われ、モン太は反論できなかった。
「許せないだろそれは、人として…」
もやもやする雲水に、モン太は
「お似合いですよ」
と言った。
「いいと思います」
言い切って、缶を拾いに腰を上げた。
「…そうか。そうだな」
「はい」
「…今度、」
と雲水は真面目に放つ。
「ヒル魔に何か奢らせよう」
それは。
「いっすね」
モン太はにかっと大笑した。
がんばって、大笑した。
やはりヒル魔は許せない、と、雲水は思った。


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